プロセスをこなすだけで満足していませんか?
今回のコラムはちょっと変わったスタイルでお伝えしたいと思います。
コロナの最中にある読者の方からメッセージを頂戴しました。育休明けで仕事に復帰するが、それまでの営業のやり方でよいのか悩まれているとのことで、特にプロセス評価に関する負の部分について現場の切実な思いを綴られていました。お勤めの会社ではプロセス評価はあるものの、会社から言われた「プロセス」をやることが目的となっていて、質を考えることなくただこなしているだけというのです。
プロセスを見える化したり、プロセス的な要素を評価でも反映したり、プロセスを重視する傾向が高まってきているのはよい傾向なのですが、その反面、本当の目的を見失ったような残念な運用に陥ってしまっているケースがあるのも事実です。
その方とのやり取りを通して、プロセス重視の負の側面にスポットを当てます。
以下、まずその方のメッセージを引用して紹介します。(ご本人が特定されないように配慮して、表現を一部変えてありますがほぼ原文通りです)
そのあとに、私からの返信メッセージも続きます。
(引用開始)
山田和裕様
とある販売会社に勤めております。
来月から育休明けで仕事を復帰するにあたって、産休前までに足りなかった営業としての考え方を勉強したく、本書(『営業プロセス見える化マネジメント』)を手にとりました。
2000年代前半に新卒で今の会社に入社しましたが、その当初からプロセス評価としての人事制度がありました。そう考えると早くから成果指標だけでなくプロセス評価がある会社評価制度はありがたいものだなと思いつつ、私を含め【プロセス】をやることが目的となっている感が社員の中であります。(プロセスやれば評価されるでしょ感、質ではなくただこなしているだけ感)・・・
何のためにこのプロセス指標が設定されているのかの理解が足りないのだと感じています。
(先生がおっしゃっている腹落ちができていない)
腹落ちしていないまま活動を進めていても営業活動のプロセスをこなすだけで、案件もできないし質も上がりません。(必ずしも全員ではありませんが、2:6:2の法則でいうと上の2割以外は腹落ちしてないと思います)
年齢は30代前半ですので立ち位置的には中堅社員にあたるかと思いますが、どんどん若手が離職してしまいます。
ゆとり世代にあたりますが、さとり世代のようにマニュアルがあったり、具体的にやることがはっきりとしている方がもくもくと仕事に取り組みやすいと感じています。
若手はとりあえず現場行け!とりあえずお客様から話を聞け!と現場へ放り出されます(私も新人時代はそうでした)
お客様が何にお困りなのか、潜在的ニーズを聞くためのノウハウって現場で覚えるものなのかなぁ、といつも疑問に思っていました。
やり方わからず、業績目標も達成できず、プロセスも意味を理解せずこなすだけ・・・ モチベーション下がって辞めていくのだと思います。
私は特に役職などはなく、ただの底辺社員ですので、まずは自分の仕事の棚卸を含めてプロセスの見える化を実施したいと思います。
本書でおっしゃっている【できる社員】の方にヒアリングもできたらと思っていますが、具体的にどうヒアリングしていけばいいか(質問項目など)が不明確ですのでもう少し考えたいと思います。
育休明けは時短勤務になりますが、せっかく仕事をできる環境なのだから、モチベーションを持って取り組みたい! 業績をあげるために効率よく仕事を進めたい!と意気込んでおります(いつまで続くのやら・・・)
長く拙い文章でお見苦しいと存じますがご了承ください。
ありがとうございました。
(引用終わり)
読者の方々から書籍の内容に関する感想やコメントは戴くことはあるものの、ここまで真剣な内容は珍しいので、何かお答えした方がよいのではないかと感じ返事を書きました。ここからは私からの返信内容です。
MK 様
フリクレアの山田と申します。読んでいただいた『営業プロセス見える化マネジメント』の著者です。思いの伝わる感想ありがとうございました。
復帰にあたって、それまで漠然と感じていた今のままの営業のやり方でよいのだろうか? というお悩みが伝わってきました。これほどしっかりコメントしてもらうことはあまりないので、返信させていただきます。
「プロセスをやることが目的化している」とのことですが、そもそものプロセスの定義が必要になるかと思います。
プロセスなら何でもよいわけではありません。私が本で書いているプロセスは、あくまでも結果を効率的に出すためのやり方を分析した手段です。
結果というゴールに向けて案件進捗を進めるために「やるべきこと」を明らかにして、見える化ツールのような資料で言語化する必要があります。
プロセスをこなしても結果が出ず、目的が達成できないのであれば、プロセス自体に問題がある可能性もあります。
復帰後プロセスの見える化を実施したいとのこと、応援しております。
お子様を育てながら時短勤務をされる際にも、「やるべきこと」と「人に任せること(助けてもらうこと)」を整理して、効率的に仕事を進めることが大切になってくるはずです。そのためにプロセスの見える化が役に立ちます。
見える化は一人ではできませんので、上司や部署のキーマンを含めた、組織の巻き込みが重要になってきます。
まずは、上の方でプロセスを見たがっている人。見える化のような科学的な営業に興味を持ってくれそうで、その人が言えば、他の人も耳を傾けてくれるような理解者を巻き込むことが、その後をスムーズに進めるための初めの一歩になります。
その他何かアドバイスなどが必要であれば、遠慮なくご連絡ください。復帰後落ち着かれたら、情報交換でもしましょう。
私も実際現場で悩まれている方の、こういった切実なお悩みは大変勉強になります。
(2022年夏 筆者より)
プロセスを評価することの本質を、評価する側も評価される側も理解しないまま、惰性で運用を行っている残念なケースですが、営業現場の本音と実態が示されていて看過できない内容です。 人手不足や、管理者のプレイングマネージャー化により、人財育成が十分に行われていないという問題は慢性化しています。その状況を考えると、何かひとつの手を打てば解決できるほど簡単ではないと思われます。
文中にあるように、特に若手は具体的にやり方を示してもらった方が仕事に取り組みやすいと本音では感じています。見える化は教える側も教えられる側にとっても必要なのにこれまで蔑ろにされてきた忘れ物のようなものなのかもしれません。
皆さんの会社のプロセス評価は形骸化していないでしょうか? 本来の意図や目的を教えてもらっているでしょうか? 腑落ちしないまま自ら問いかけることをせず、プロセスをこなすだけで思考停止していないでしょうか?
もしこのコラムの中でどこか少しでも心に引っかかるものがあれば、一度立ち止まって見つめ直す機会にしていただければと思います。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2023年07月25日)