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コラム

KPIの考え方に関する違和感

 

一般的なKPIの誤った常識?

 

コロナ禍で変化対応を迫られているせいでしょうか、業務の見直しに着手するところが増えているようです。DX推進の動きと相まって、これまで手つかずになっていた「業務プロセスの見直し」もトレンドのひとつとなっています。

 

そんな中わかりやすさから「KPIマネジメント」を取り入れようと、ご相談をいただく機会も増えています。相談の内容は具体的には「KPIツリーをつくりたい」というご要望に落ちてくるのですが、そもそものKPIの定義や設定の考え方に、刷り込まれた先入観というか誤解を恐れずにいうと、“誤った常識”があるような気がしています。

その根本的な問題を指摘せずに、ご要望のKPIツリーを作成するだけでよいのだろうかコンサルタントとしての良心の呵責に苛まれることもあるのです ・・・・・

よくあるKPIツリーとその問題点

 

KPIツリーの欠点は、分解要素が細かくなりすぎ枝葉の論議に陥りやすいことです。また、一見論理的ではないが感覚的に影響があるとわかる、定性的な要素との関係性をうまく描き出せないも問題です。

 

(図1)よくあるKPIツリーのサンプル

img src=”kpitreesample201026” alt=”よくあるKPIツリーのサンプル”/

 

そもそもKPIとは?(意外と知らないその由来

 

KPIはバランススコアカード(以下“BSC”)の中で、業績評価のための先行指標として紹介されたものです。BSCは、ロバート・S・キャプラン氏(ハーバード大学教授)と、デビット・P・ノートン氏(コンサルティング会社社長)が提唱した業績評価システムで、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点から業績目標の達成を考える手法です。

 

従来型の業績評価は売上や利益などの財務指標を主な指標として行われてきました。しかし財務指標は、あくまで過去に行ったこと(プロセス)の結果を示す結果指標(遅行指標)にすぎません。

BSCでも財務指標が最終的な結果を表す点は同じですが、そのために必要な顧客、業務プロセス、学習と成長という3つの先行指標(これらをパフォーマンス・ドライバーとも呼びます)から、戦略目標の進捗と達成をコントロールできるメリットがあります。このあたりが受けて1990年代の登場以来、多くの日本企業でも取り入れられました。

 

本来のKPIのあるべき姿?

 

ご存知のようにKPIKey Performance Indicatorの略で、一般的には「重要業績評価指標」と訳されていますが、この抽象的な日本語訳がそもそもの誤解の始まりです。よく考えると重要業績評価指標では何のことかよくわかりません。本当は“業績の先行予測指標”に意訳し直した方がよいと感じます。

 

また、BSCにおけるKPIはリピート率、顧客満足度、業務の改善提案数、研修の実施数など、包括的な上流概念に近いものが多く設定されがちです。そのせいか一般的に運用されているKPIは、目標数字の構成要素を細分化した“結果KPIが多くなっています。

 

ところが営業現場などでは、それらをどうやって達成するのかという、もっと具体的な指標が求められます。そこでフリクレアでは、売上や利益といった組織の目標であるKGIを達成するための、業績先行予想指標として“プロセス指標”と呼んで区別しています。とはいえ、KPIという言葉はだいぶ浸透しているので、このコラムでは便宜上“行動KPIという言い方を使います。

BSCの意図するレベル感とはやや異なるところもありますが、営業でよく使われる行動KPI(プロセス指標)の例としては、訪問件数、新規顧客開拓数、案件数、提案・見積数、成約件数などが挙げられます。

 

(図2)営業のプロセス指標(行動KPI)

img src=”eigyounoprocessshihyo201026” alt=”抽象的な職務役割定義の悪い例”/

 

ちなみに、フリクレアが考える基本的な行動KPIの条件は、以下の3つです:

・売上/粗利アップにつながりやすいか(間接的、遠回りであっても)

・取り組む社員に直感的にわかりやすいか(取り組みやすいか)

・システムで定量的に取りやすいか(入力してもらえるか)

                                                                       

KPIは適切に設定されているのか?

 

ここまでは他の解説書などにも出てくる話ですが、問題は「KPIの設定が適切に行われているか否か」という基本的な点です。KPIの設定が不適切であれば結果が担保されず、目標達成というゴールから外れてしまう心配があります。つまり、KPIは慎重に設定しなければならず、その具体的な方法をもっと深掘りして真剣に考えなければならないわけです。

 

行動KPI(プロセス指標)は、目標に向かって問題なく進んでいるか確認しながら、ゴールを目指すための道標です。売上や利益といった財務目標を達成するために、先行予想指標として設定されなければなりません。また、ボトルネックを特定、その解決も考慮した上で、業績向上に寄与するものが選ばれなければなりません。

 

実際はKGIに近い結果指標か、数が多すぎるケースが多い!?

 

ところが、コンサルタントという仕事上KPIに関する相談も受けますが、結果指標に近いものがKPI=結果KPIとなっている場合が多いのが実に多いのです。KPIが財務目標とほぼ同じになってしまっている。これについては、そもそもKPIの考え方や定義が明確ではないこと、結果志向が強すぎて本来の趣旨からそれてしまうことなどが理由として考えられます。

 

また、KPIを設定する前に業務の全体像がわかっていなければ、正しいKPIは設定できません。全体像を意識しないままでは、KPIツリーなどで精緻にKPIを設定しても、目標達成の精度を上げるのは難しい。木を見て森を見ずの状態に陥りやすいのです。

とはいえ現実的には、プロセス全体がしっかりと設計されている組織は、まだそう多くはありません。結果との相関性の低いKPIや、財務指標に近い計測してもほぼ意味のないKPIを誤って設定してしまうのも、プロセス全体図がないことに起因するものです。

 

あるいは、KPIが絞り込めずその数が1020にもなるケースもあります。これも全体俯瞰的な視点の欠如が原因です。プロセスの俯瞰図がないと不安なので、あれもこれも入れておいた方がよいだろうと、管理する側が数多くのKPIを設定してしまうわけです。これではかえって集計・報告の手間を増やすだけで、業績改善につながりません。

 

KPIマネジメントを成功に導くためには

 

結果に導くKPIを適切に設定し、KPIマネジメントを成功に導くためには、KPIを考える前に該当する業務全体のプロセス設計をしっかり行い、“KPI設定のための羅針盤”をつくることです。

 

ポイントは、プロセスの全体設計が正しくできているかどうかです。全体設計図・俯瞰図があれば、目標達成を阻むボトルネックとなっているプロセスも特定できるので、そこにスポットを当てた適切かつ最小限のKPI設定が可能になります。

ボトルネックに関連したKPIを改善しないかぎり、その後のKPIをいくら測っても現場の労力が増えるばかりで意味がありません。せっかくKPIを設定してもなぜか結果が出ないケースがあるのは、この大前提が抜けているのからなのです。

 

そこで、フリクレアではまず“見える化ツール”でプロセス全体のプロセスを標準化・見える化します。そして、KPIマップ”KPI候補を視覚的にわかりやすくリストアップして、目標とするKGIとの相関関係を確認しながら、本当に必要な行動KPIを絞り込み決定します。

 

見える化ツールの「プロセスシート」は、業績アップにつながる正しい行動プロセスの流れを整理した俯瞰図です。そして、その行動プロセスをどうやればうまく進めていけるかという具体的なノウハウをまとめた「標準プロセスの手引き」がガイドブックとなります。

⇨ 見える化ツールについては、コンサルティングのご案内 > プロセス見える化 > 成果物=見える化ツールを参照ください。

 

さらに、「KPIマップ」が、行動KPIを正しく選定、設定するための羅針盤としての役割も果たします。KPIマップは、見える化ツールで標準化・見える化したプロセスの上に、行動KPIをわかりやすく配置したものです。

KPIマップの中で行動プロセスで軸を決め、行動KPI候補を見える化します。業績目標に影響する定量・定性的な要素や、目標達成を阻むボトルネックも視覚化できます。KPIツリーによる単純な論理思考だけに頼らず、帰納法と演繹法(直感と理論、右脳と左脳)を反復しながら総合的にKPIを判断することが可能になるのです。

 

(図3)KPIマップのサンプル

img src=”kpimapsample201026” alt=”KPIマップのサンプル”/

 

KPIマップにご興味がある方は別途PDF版をプレゼントしますので、お問い合わせフォームからご連絡ください。

 

秘訣を2つにまとめると

 

フリクレアなりの成功しやすい行動KPI設定の秘訣をまとめると、以下の2点に集約されます。

 

①業務プロセス全体の設計図を用意する

いきなりKPIツリーを書き始めるのではなく、まず対象業務の成果を担保するプロセスを見える化ツールでしっかり設計する。

KPIマップという羅針盤で視覚的にKPIを確認する

KPIツリーだけに頼るのではなく、プロセス全体を見ながら、行動KPIを正しく設定するためにKPIマップを羅針盤として活用する。

 

いかがでしたでしょうか? 一般的なKPIの考え方(常識のウソ?)とは違う内容なので戸惑われたかもしれません。しかし、結果の数字に近いところで、細かいKPIをいくらいじくりまわしても、実は意味はありません。

KPIを運用しながらも、その本質に薄々気づかれていた方も多いはずです。勇気をもって、結果KPIではなく正しい行動KPI(プロセス指標)を使ったKPIマネジメントに進化させることを、今一度じっくり考えていただければと思います。

異論反論も大歓迎ですので、よろしければコメントをお寄せいただければと思います。

 

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

KPIの設定がうまくいかずに悩んでいる方、KPIを含む本格的なプロセスマネジメントを導入してみたい方は こちらからご連絡ください

 

⇨ コラムへのご意見やご感想は info@flecrea.com へ

 

()フリクレア 代表取締役

山田和裕


(2020年10月26日)

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