企業変革の8つのプロセス(上)
「この会社は変革が必要だ」。経営会議から飲み会まで様々な場所で、組織の将来を憂う社員がよく口にする言葉ですが、取り組んだことのある人はよくわかるように、実際の変革は本当に難しいものです。
「総論賛成・各論反対」「面従腹背」。慣れ親しんだやり方を変えることへの抵抗は、人の本性とも言えるもの。そのことを改めて痛感させられます。
新規事業開発や新たなマネジメント手法は言わずもがな。新しいITツールを導入するだけでも、すんなりいくことはまずありません。
何事にもプロセスがありますが、企業変革もしかり。ジョン・コッターが書いた『企業変革力』という本に、実は「8段階の変革プロセス」というものがまとめられています。図にまとめてみましたので、参照しながら読んでください。
企業変革の8プロセスはこうです。①危機意識を高める → ②変革ための連帯チームをつくる → ③進むべき方向(ゴール)を示す → ④変革ビジョンを周知徹底する → ⑤社員のやる気を削ぐ阻害要因を取り除く → ⑥小さな成果を生み出す → ⑦小さな成功を活かして、さらに変革を進める → ⑧最後に、企業文化に定着させる
一つひとつのプロセスは奥深く、抽象化しすぎるとその真意が伝わりにくいので、少し長めですがエッセンスを凝縮して補足します。
尚、○は段階を進めるために必要なアクション、×はやってはいけないことを表します。
①危機意識を高める
(現状に満足せず緊張感を与える)
×現状満足が蔓延している時には、人は変革に本気で取り組まない。
○ 現状満足が生まれる原因を取り除く:
(1)目に見える危機状況の欠如
(2)贅沢なオフィスや福利厚生
(3)自分に都合のよい業績評価基準
(4)部門の目標達成しか関心がない
(5)目標設定が低く不適切
(6)顧客の不満が耳に入らない
(7)正しい行動をとる人間を疎んじる
(8)悪い情報は無視
(9)全てうまくいっていると思い込む
②変革ための連帯チームをつくる
(強力な連帯チームの存在が不可欠)
× 変革は一人の強力なリーダーシップを持った人間だけでもたらされるものではない。
× 経営幹部が変革や連帯チームの必要性を心底納得していないと失敗する。
○ 強力な連帯チームの存在が不可欠:適切なメンバー選定の重要性
→ 社内政治力を備えた重要人物 + 皆が認めるエース級のできる社員 +
変化対応のリーダーシップ + 必要な専門性
○部門間の部分最適を超えた全社的な目的と信頼関係の構築
③進むべき方向(ゴール)を示す
(実現可能な将来像をわかりやすくはっきり示す。)
× おそまつなビジョンは、ビジョンがない場合よりも悪影響を及ぼす。
○ 将来像をわかりやすくはっきりと示すビジョンと、そのゴールに達するための戦略が、1~2ページの文書にまとめられている。
○ すぐれたビジョンの特徴:見やすい、長期的な利益貢献、実現可能、5分で説明可能
④変革ビジョンを周知徹底する
(伝えやすさ、多様なコミュニケーション、言行不一致を無くす)
× 変革を妨げる最大の要因は、経営幹部の言行不一致。
○ ビジョンは多くの人に伝達しやすいように本質的、直感的、簡潔に。
○ ビジョンは数多くの方法を通じて、繰り返し伝えられ、双方向のコミュニケーションが成立する時に最も効果的に伝わる。(周知徹底)
コラムとしては長くなってしまうので、切りが悪いかもしれませんが、今回はここで止めておきます。変革プロセス⑤社員のやる気を削ぐ阻害要因を取り除く以降については、次回また改めて説明します。
(2016年11月04日)