企業変革の8つのプロセス(下)
前回企業変革の8つのプロセス(上)では、変革プロセスの④変革ビジョンを周知徹底するまでを説明しましたので、今回は⑤社員のやる気を削ぐ阻害要因を取り除く以降を引き続き説明します。
⑤社員のやる気を削ぐ阻害要因を取り除く
(結果論、組織の壁、人事制度、IT(2重入力等)が邪魔をする)
× 社員はビジョンを理解しており実現したいと考えているが、その行動を邪魔するものがある。
○ 社員の自発ややる気を削ぎ、変革の行く手を阻む阻害要因を取り除く:
(1)組織構造(たこつぼ組織、連携不足、結果論による批判、本社施策の多さ)
(2)人材の能力不足と、適切な教育プログラムの欠如
(3)人事システムがビジョンに合っていない
(4)理解のない上司が邪魔をする
→(解決の方向:人事の活用)
⑥小さな成果を生み出す
(短期的な成果(小さな成功)を大切に)
× 大きな夢ばかりに目を奪われて、小さな成功や短期的な成果に眼を向けないと変革は失敗する。
○ (1)ビジョンは間違っていないという証拠を示す(2)モチベーションが高まる(3)ビジョンと戦略を微調整する機会を生む(4)反対勢力の勢いを削ぐ(5)経営陣を味方につける(6)傍観者や消極派も味方にできる
○ 迷っている大多数にもはっきりわかるように、貢献した人々を評価し報いる。
(人事の活用)
⑦小さな成功を活かして、さらに変革を進める
(中途半端で満足しない)
× 中途半端で満足すると推進の勢いが消え去り元に戻ってしまう。抵抗がなくなることはない。
○ だから、油断せずさらなる変革を進め、変革を阻害する石の壁を破壊する勢いを築きあげる。
○ 短期的な成果によって得られた人々の信頼を活かして、変革を阻害する要因をなくすための関連プロジェクトを推進し、変革の基盤を強化しスピードアップする。
○ 経営から現場まで、適正人材がリーダーシップを発揮し、マネジメントを行い、進捗やプロセスをコントロールする。(プロセスマネジメント)
○ 人事的には変革ビジョン推進に貢献するさらに多くの人材を参加させて組織を強化。功労者はきちんと評価・昇進させる。(人事の活用)
⑧最後に、企業文化に定着させる
(行動を変える。証拠を示す。議論を繰り返す。評論家を排除)
× 最初に企業文化を変えようとしてはならない。
○ まず人々の行動様式を変え、変革が業績向上に効果があることに“気づかせる”。
○ 証拠を示す。新しい仕事のやり方は、従来のやり方より優れている(効率的に儲けられる)ことが、事実として認められてはじめて企業文化に定着する。
○ 議論を繰り返す。人は言葉ではっきり説明され、人事を含めた社内制度などで後押しされない限り、新しいやり方を本気で受け入れることはできない。(人事の活用)
○ どうしても抵抗を続ける象徴的な人物や評論家は、“ルールに従い”排除する。(人事の活用)
変革に挑戦したものの途中で挫折した人も多いはずですが、コンサルを通してお手伝いをさせてもらっているある大手旅行会社の変革リーダーの一人は、従来の団体旅行を中心とした旅行営業から地方創生に事業ドメインを変える大変革に、10年以上の年月をかけて粘り強く取り組みました。
社内から理解を得られない時期もありましたが、今や注目の的です。彼はこれまでの軌跡を振り返りながら感慨断言します。「まさにこの8つのプロセス通りだった」と。
「営業の見える化」の取組も、きれいにまとめられた事例とは異なり、挑戦と反対派との調整の繰り返しというのが現実です。とはいえ紆余曲折を経らながらも、30年以上前から着実に変遷をとげてきているのも事実です。
属人的なやり方が当然とされまだPCすら普及していなかった頃でも、一部の先行企業が業務の標準化に取り組んでいた「見える化1.0」の時代。重いPCとガラケーと遅い回線速度にフラストレーションを感じながらも、古いやり方からの脱却を目指し取り組んだ「見える化2.0」。そして、今やスマホやタブレット普及しモバイル環境が飛躍的に改善、行動のデータ化が容易になり「見える化3.0」とも言える時代に突入しています。
既に10年以上も前から見える化に取り組んできた先行ランナー達に目を向けると、トラックレースに例えれば既に2週目、3周目に入ってきています。
変革プロセスでいうと、⑤社員のやる気を削ぐ阻害要因を取り除くの段階でしょうか。具体的には、「目先の結果主義からの脱却、そして、プロセス主義への転換」、「部門間の連携強化」、そのための人事評価制度の刷新(特にプロセス重視)、ITシステムを実態に合せる(最悪は2重入力等)等の施策に取り組んでいます。
「あなたの会社の変革は、今どの段階でしょうか?」
「そして、どのプロセスに課題があるのでしょうか?」
現在推進中の変革プロジェクトがもし滞っているのなら、何かヒントがあるはずです。実際取り組んでいなくても、自分が属する組織の変革のリーダーになったと想定して考えてみると、何か見えてくるものがあります。
「見える化」の進化は加速度化しており、放っておけばその差が広がるばかりです。
(2016年11月22日 → 2022年2月1日 一覧用本文等の修正)
(2016年12月02日)