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人財育成の基本の型(標準プロセス)
ビジネスの世界においても、人財育成のためには基本の習得が大切です。そのためには、まず会社が成果につながりやすいプロセスを標準プロセスとして整理し、基本の「型」として明確に示さなければなりません。
ところが、ホワイトカラーの育成においては「必要な基本の型を示さないまま現場に放り出し、あとは属人的なOJTと運に任せる。時折、現場の実態には合わない机上論を基にした研修でお茶を濁している」ようにしか見えないのは私だけでしょうか?
スポーツでも武道でも何か新しいことを始めようと思ったら、普通はまずは基本の習得から始めます。サッカーに例えれば、未経験の生徒がサッカー部に入部してきても、いきなりゲームはやらせません。まずは、先輩へのあいさつなどルールやマナーを教え、球拾いなども経験させます。それから、キック、トラップ、シュート、ヘディングなどの基本技術のトレーニング。その後、徐々に実践練習に入っていくというプロセスをたどります。
ところが、なぜかビジネスになると「スピード」や「即戦力」という都合のよい言葉を使って、本来行うべき最低限のトレーニングも行わないまま、いきなり現場に放り込み、成果主義の名のもと結果だけを求める光景がよく見られます。
人財育成を効率的に進める基本の「型」となるのが“標準プロセス”です。標準プロセスとは、業績向上や業務効率の改善につながる有効なプロセスのことです。
武道では基本を学び身につけて初めて、その人なりの創意工夫を行い技量を高めることができます。『習+守・破・離』という考え方です。
(詳しくはコラム「習+守・破・離」を参照ください)
同様に、ビジネスでも標準プロセスを「共通理解の基礎」や「共通言語」として、日々のコミュニケーションをとったり、教育トレーニングを行ったり、勝・負パターン分析やノウハウを共有しながら生産性の向上を図るのです。
標準プロセスは人を育成するにあたり、基本を徹底するための「型」であり、自分で考え行動できる自立型人財の成長を支援します。人財を育成しながら効率的且つ継続的な業績の拡大を図るためには、標準プロセスの整備とそれを支えるプロセス評価が欠かせません。
誤解のないように補足しておくと、プロセスや型と言うとその通りに人を動かすマニュアル的なものと誤解される人も多いのですが、決してそうではありません。標準プロセスは社員の行動をマニュアル化したり、型にはめるものではありません。
社員の成熟度や経済環境の変化に応じて、標準プロセスそのものも変化していきます。標準プロセスは、ファーストフード店でアルバイトに仕事を覚えてもらうための型にはまったマニュアルではなく、常に改善の工夫を行いながら更に上のレベルをめざす「創造的なルーティン」とも言えるのです。
かつての高度成長期までは「社員は失敗を繰り返しながらも自分で考え成長していく。上司は必要なアドバイスを与えながら部下の成長を暖かく見守る」という中・長期的な視点に立った育成が可能でした。しかし、今は新人・中途社員の育成にかけられる時間は限られています。
富士山を自分の足でふもとから登るのは貴重な体験ですが、バスで三合目まで上がりそこから自分の希望やレベルに合わせて上をめざすのも現代の選択肢の一つです。三合目までの近道が標準プロセスなのです。
(2012年12月07日)