抵抗勢力が反対する理由 ― プロセス主義®を組織にどうやって浸透させるか(3)
プロセスの見える化はなぜ進まないのか?
今の時代「プロセスの見える化も必要ですよね」という話をして、頭から否定する人は多くはありません。ところが現実の組織では、見える化が進まない、着手すらしていないということはよくあります。その大切さに気がつきながらも、プロセス見える化へはなぜ進まないのでしょうか?
この疑問に目を向けないままプロセスの大切さを訴えたり、「プロセス成熟度モデル」や「社内浸透度シェア」の話をしても、机上の教示だけでは現場の心を打たないような気もします。
3つの理由
そこで視点を変え「見せたくない側」の気持ちになって考えると、その理由が見えてきます。社内の抵抗勢力が反対する理由としては、これまでのコンサルティング現場での経験からすると、以下の3つのパターンに集約されるようです。
①結果の数字という呪縛から逃れられない
まず、“目先の結果主義”の根強い悪影響で、自分の在任中には結果の数字を下げたくないなどの利己的な理由があります。経営者や営業リーダーが自分のことしか考えていない組織で働く社員は不幸です。
人財育成を含めた中長期的な視点の欠如やプロセス無視により、問題が露呈しているかどうかは別として、こういう組織は緩慢なる衰退への道を歩むことになります。不祥事の発生や組織の破たんは時間の問題です。
抜け出す糸口としては、営業プロセスの見える化が業績アップにつながるストーリーの本質を理解すること。これにつきます。
②面倒くさい
「忙しいのでプロセス標準化にかける時間がない」「現場に負担がかかる」「うちの営業マンはまだそんなレベルに達していないので無理」などのもっともらしい理由を、反対派は並べてます。
本当は本人が本質を理解せず、面倒くさそうなのでやりたくないだけ。こういった手合いは問題をすり替えて、できない理由を説明するのがとても上手です。
現場に気を使っているそぶりを見せますが、中長期的に組織にとって「本当に必要なものは何か」という、責任当事者として決して失ってはいけない大切な視点が欠如しているのです。
さらに考えてみると、営業マネジメントに対する真摯さ、特に本気で営業力を強化しようという思いも欠けていることに気づきます。あるべき方向に組織を動かす問題意識と行動力のなさを露呈しているも同然です。
その実体は、近視眼的な事なかれ主義のもと、悪い意味で社内の空気を気にする〝保守派〟、あるいは、余計な仕事は増やしたくない〝楽をしたい派〟、または、やる気のない〝評論家〟といえます。
③プロセスを見せたくない
自分のちょっとしたノウハウを隠したがる古い営業のタイプも、一部にはまだ存在するようです。組織的なノウハウ共有のメリットを知らないのは不幸です。ノウハウを人と共有し教えることでフィードバックを受けることができます。また、他人のやり方も学ぶことで、現状に満足せず自らもさらなる高みを目指すことができます。
営業一人のノウハウなどたかが知れています。社内競争という目線の低い戦いではなく、組織全員のチームワークで抜本的な業績アップを狙う必要性や、営業は個人力から組織力の時代に変わっていることに、まだ気づいていないのです。それは思考停止を意味し、変化対応ができていない証拠です。
そもそも、自分のプロセスを見せたくないというのは、本当のできる営業ではありません。むしろ、怪しいと言えます。不正行為などを行っているという不都合があるため見せられない、という論外のケースも依然として存在しています。
「総論賛成、各論反対派」を動かすには
社内の抵抗がはっきりとわかる形をとるとは限りません。むしろ、営業の見える化そのこと自体については、総論としては反対する人は少ないのです。ただし、現実的に動こうとすると話は別です。
「総論賛成、各論反対」というやつです。特に、おためごかしを言う前述②の保守派や楽をしたい派が耳元でささやく、プロセス主義®を骨抜きにする無責任な言葉が一番の敵です。
「現場は忙しいので仕方がない」というもっともらしいあきらめ論に惑わされないよう十分注意してください。
プロセスの見える化は、現場の忙しい原因を具体的なプロセスで特定し、生産性を上げ残業を減らす良薬でもあります。本当は「見えない」から忙しいのです。
業績アップにつながるロジックを説明する
イノベーターやビジョナリーは、アナロジー(類推力)を備えているので全部聞かなくてもすぐ連想できるのですが、実利主義者以下に対しては、プロセスの見える化が業績アップにつながるロジックをわかりやすく説明した方が理解を得られやすいのです。このことを忘れないでください。
(イノベーター、ビジョナリー、実利主義者については、こちらをどうぞ → 「普及ラインとキャズム ― プロセス主義®をどうやって浸透させるか(1)」)
「どうしてわからないのだ」「あいつは頭が悪い」とイライラし、怒りをぶつけてみても事態は変わりません。他人のせいにして現実から逃げないことです。
まずはわかりやすい説明のやり方も工夫しながら、共感の輪を広げる社内プロセスを粘り強く踏まねばなりません。
目先の結果主義の壁は高く、くずし難いもの。正論を唱え現場の自主性に期待するだけでは、プロセス主義®はいつまでたっても浸透しません。
最後は覚悟が問われる
最後は、経営者と営業リーダーの確固たる思いと覚悟が問われます。わかりやすい社内説得と社内マーケティングを繰り返す、粘り強い組織内政治力も必要不可欠です。
様々な考え方・生き方の人が混在する会社という組織においては、イノベーターやビジョナリーはしょせん16%以下の少数派。
現場には、結果至上主義という「組織風土の変革 = プロセス主義®へのDNA進化」を阻む手ごわい輩が存在します。正論はある意味一面的な見方にすぎず、考え方の違う反対派を納得させることは容易ではありません。
以上、プロセスの見える化(プロセス主義®)社内に導入する際に注意すべき「抵抗勢力が反対する理由」について、反対する側の視点から解説しました。
シリーズ最後の4回目は「抵抗勢力を巻き込む」というテーマで反対派を味方にする方策について考えてみます。
ここまでの「プロセス主義®をどうやって浸透させる」シリーズ①~②も、よろしければどうぞ ↓
(シリーズ①)普及ラインとキャズム ― プロセス主義®をどうやって浸透させるか(1)
(シリーズ②)社内浸透度を高める ― プロセス主義をどうやって浸透させるか(2)
こちらの関連コラムもどうぞ → プロセスの見える化がなぜ必要なのか?
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2022年03月25日)