• お問い合わせ
  • 03-5637-7180
コラム

プロセス見える化でテレワークを成功させる

 

 今回は「どうすれば複雑な仕事のプロセスを見える化できるのか?」という疑問について解説する予定でしたが、読者の方からテレワークを成功させるためにプロセス見える化も大切ではないのか?という問題提起をいただいたので、テーマを変更してお伝えしたいと思います。

 

コロナウィルス感染防止の対応策としてにわかにテレワークの必要性が高まり、各社とも急遽対応しているものの、十分な準備期間もないまま見切り発車的に始めたので、どうやってうまく運用するかルールづくりに悩まれている会社も多いようです。

テレワークということで、どうしてもWeb会議のツールにスポットがあたりがちですが、仕事のやり方を変えずにツールだけに頼ってもうまくいきません。「ツールだけでは何も変わらない」という残念な法則におちいらないか心配です。

そこでこのコラムでは、他とはちょっと角度を変えて、本来はテレワークツールを使う前に整えておかなければならない、 ――――  いや、対応は待ったなしなので走りながら考えなければなりませんが ―――― テレワークマネジメントの基本について、①タイムマネジメント ②業務プロセスの標準化・見える化 ③プロセス評価という3つの視点から、テレワークを一過性のものに終わらせずに、コロナ収束後も継続して運用できるようにするポイントを考えてみたいと思います。

 

①タイムマネジメント

テレワークの場合、会社/マネジメント側からすると「ちゃんと仕事をやってくれているのだろうか?」、部下からすると「真面目にやっていないと疑われているのではないか?」という点が不安要素のひとつではないかと思います。

真新しい話ではありませんが、テレワーク実施の基本として見落としがちなのが、スケジューラーを活用したタイムマネジメント = 何をやるのかの見える化です。

 

「なんだ、スケジューラーか?」と思うかもしれませんが、スケジューラーに業務予定をしっかり入れてさえいれば、余計なコストや手間をかけずに、在宅勤務やオフィス外での社員の行動の見える化ができてひとまず安心です。

もう少し深掘りしましょう。スケジューラーを使っている会社は多いと思いますが、普通は外出や会議の予定は入れているものの、資料作成などのデスクワークや顧客訪問や会議のための準備など、具体的な実務作業までは入れているところは少ないのではないでしょうか。

しかし、具体的な内容が確認できないと、マネジメントとしては不安です。今日何をするのか、今週1週間どういう動きをする予定なのかを、計画的にスケジューラーで見える化しておけば、上司も部下もお互いに安心して仕事をすることができます。

もちろん、突発事項は常にあるし、計画通りにいかないのがビジネスなので、“とりあえず入れておく”という感覚で十分です。予定通りにできなくても、スケジュールを調整すればいいという組み立て方で、備忘録的に見える化しておくことがポイントなのです。

 

 テレワーク以前の問題ですが、実はスケジューラーに普段から行動予定をしっかり入力させておけば、余計な管理を行わなくてもスケジューラーを見ているだけで、その担当ができる社員か、あまり細かいことを言わなくても任せられるかわかるのです。

プロセス見える化でテレワークを成功させる

 

②業務プロセスの標準化・見える化

上記①からの流れを続けます。入力にあたって気をつけなければならないのは、「○○の件」と漠然と書くのではなく、具体的に何をするのかをわかりやすく示すという点です。スケジュールの入力ルールが明確化・徹底されていないと、各人が思い思いのバラバラな入れ方をするので、何をやっているのか直感的にわかりにくくなります。

 

業務プロセスを整理して“標準プロセス”として入力することをルール化しておくと、管理する側もパッと見てすぐわかります。例えば、対顧客向けの社外活動であれば、「商品説明」「ヒアリング」「フォロー(メール・TEL)」。社内業務としては、「資料作成」「社内事務作業」「クレーム対応」「社内会議」。今であれば「コロナウィルス関連対応」「テレワーク」「Web会議」などの特別項目も必要になるでしょう。

 

このように業務プロセスを明確にして、何をやるのかを共通言語の標準プロセスを使ってスケジュール化するわけですが、そのベースとして“業務プロセスの標準化・見える化”が必要になるわけです。

ちょっと話がずれますが、今回のコロナ騒動の前に、残業削減や生産性向上を目的とした働き方改革が今一つうまくいっていなかったのは、「業務プロセスの標準化・見える化」に取り組み、仕事のやり方を根本的に見直すことなく、時間短縮や早期退社など表面的な対処策だけを行ってきたということに真因があります。

 

 テレワークの前にホットだったのは「働き方改革」でした。今は突然テレワークにスポットライトが当たっているわけですが、いずれも話としては特に新しくはありません。以前からある永遠の課題なのです。

その昔はシンプルに「残業削減」と言っていました。つい最近までは「ライフワークバランス」。いつの間にかもう聞かなくなりましたが・・・。働き方改革、そして、テレワークのあとも、また呼び方(言葉)を変えて続いていくはずです。

「分業やチーム営業による組織力強化・負荷軽減」という課題を解決しなければ・・・・・   

 実はこの「分業やチーム営業」、そして、それを可能にするための「プロセスの標準化・見える化」が、テレワークや働き方改革を成功に導くための大切な鍵なのです。

 ただ残念ながら、働き方改革までは、なぜか社員1人ひとりの工夫で何とかしようという風潮がありましたが、それでは何も解決しません。今のビジネスは複雑なので、個人の頑張りでできることには限界があるからです。ここはもっと語りたいのですが長くなりすぎるので、また別の機会にして次のポイントに移りましょう。

 

③プロセス評価

今期は未曽有の事態で先行きが全く見えず、残念ながらほとんどの会社が予算の大幅な見直しは避けられません。今回のコロナウィルスの問題は個々の会社組織や個人の努力の域を超えており、こういった状況下で結果の数字だけを追っても意味がありません。

 

この機会に結果ばかりを追い求める業績至上主義 = 目先の結果主義の呪縛から目を覚まして、コロナ危機が収束した時に一気に動き出せるように、様々な課題解決の根源となる業務の棚卸しや見える化し、それを支えるための人事評価面での工夫(例えば、プロセス評価の試験導入)などを真剣に考えるよい機会ととらえてみるのはいかがでしょうか。

例えば営業では、頑張りやプロセスも見ると言いながら、実質的には結果の数字中心に評価を行ってきました。しかし、今後はテレワークで何をどうやってやればよいのかも含め、結果を効率的に出すためのプロセスの標準化を行った上で、プロセスを見えるようにして、人事評価でも支援していくことが解決の糸口のひとつになるはずです。

 

誰も経験したことがない今回の劇的な変革期に本気で対応するための努力や、工夫、チャレンジなどもきちんと標準プロセス項目として定義~明確化。そして、テレワークなど多様な働き方のスタイルを認め、本当の意味での働き方改革や生産性向上を図るための、プロセス主義へ徐々にシフト(プロセス見える化とプロセス評価の導入)を行うことは、もはや好むと好まざるとにかかわらず、必ず正対しなければならない経営課題であることを強調しておきたいと思います。

 

以上、3つの視点からコロナショック収束後まで見据えて、テレワークをうまく運用するための基本条件をまとめてみました。個々の要素はフリクレアがこれまで提唱してきたことですが、人によっては当たり前のことのように感じるかもしれません。

とはいえ、今回のコロナウィルス騒動でオフィスワークができない状況下におかれると、普段それなりにできていると思っていたことが、今後も別な災いとして形を変えて起こるであろうことを想定すると、十分ではなかったのだということにも気づかされます。

 

これまで進められてきた働き方改革や、最近新しいトレンドとして浮上してきたDXも、こういった本質的な業務の見える化の部分までは切り込まずに、うわべだけの労働時間短縮、残業削減やICTシステム導入で取り繕うだけで、本当に取り組まなければならない課題を先送りしてきただけなのです。

今回はテレワークにスポットを当てましたが、実はその目的語を「働き方改革」「DX推進」「業務の効率化・生産性向上」「営業力強化」などに置き換えても同じことなのです。抜本的な体質改善のための処方箋は、皆が薄々その重要性に気づきながらも、目先のことにとらわれずっと先送りにしてきた、<仕事のプロセスの標準化・見える化>なのです。

 

コロナウィルスの影響でテレワークが増え、通勤時間や余計な社内会議が減り考える時間が増えた今、業務プロセス見える化を最重要課題のひとつとして、改めてじっくり向き合う時間を与えられたのだととらえてみるのもよいのではないでしょうか。

これから数年後に2020年という年を振り返ると、コロナショックを契機に、テレワークとその必須条件として取り組まなければならない「業務の見える化」が、一気に進化・加速化した年として思い出されるようになるのかもしれません。

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

 

()フリクレア 代表取締役

山田和裕


(2020年04月24日)

この記事をシェア