“人財育成の基本の型”で成長スピードアップ― 人財育成(2)
自主性のある社員はひとにぎり
前回は、会社や組織側が“標準プロセス”を整理し、「人財育成の基本の型」を明確にすることの意義と効果、について解説しました。標準プロセスをまとめた資料は、自分で考え行動できる自主性を持った社員の成長を支援します。(標準プロセス資料のことを、フリクレアでは“見える化ツール”と呼んでいます)
若い頃から本当に自主性をもった人財はそう多くはありません。正しい型を教えることができれば、成長スピードを上げられます。結果的に、自主性も早く育まれるのです。
「型」のよいところばかり説明すると、フェアでないかもしれません。よくある反論はこうです。「型にはめるより、社員の自主性を大切にすべきではないか。自分で考えさせなければ本当の成長にはつながらない」。
しかし、このような社員の自主性に任せ、一人ひとりに考えさせるのが一番よい方法だという考え方は、残念ながらすべての社員に当てはまるわけではありません。
自主性に任せてうまくいくのは、多くても組織論で言うところの上位2割の社員です。その中でも実績に裏づけされた本当の自主性を備えていると考えられるのは多くて数パーセントです。
自主性の罠にご用心!
人財育成は理想論ではうまくいきません。自主性に任せるだけですむのであれば、誰も苦労しません。
まず、社員の実際のレベルと資質(能力、やる気、自主性、自己研鑽 …)を見分けることが先決です。やみくもに自主性に任せれば収拾がつかなくなり、マネジメントどころではありません。
(関連コラム)「人をマネジメントする方法は一つではない」「4つのマネジメントスタイルを使い分ける」
本当にできる社員であれば正しいプロセスを見つけ、実践できるかもしれません。ところが、実際は自分の勝手な思い込みで、得意なことや好きなことを、良かれと思って実践するものです。
また、若手社員の多くは、「やり方をわかりやすく提示してもらった方が楽だ」と考えています。(この点についてはまた回を改めて詳しく解説する予定です)
自社の組織の中を見渡してみても、本当に自主性を発揮して働いている社員は限られているはずです。自主性を重んじすぎると逆に人が育ちません。“自主性の罠”と言われるものなのでご用心を。
詳しくはこちらのコラムもどうぞ → 自主性の罠? ― 創造性は基本習得の後に生まれる
プロセスは創造的なルーティン
「型」というと、融通のきかないマニュアル的なものを想像する人も多いようですが、決してそうではありません。「人財育成の基本の型」は、社員の行動を型にはめたり、創造性を奪ったりするものではありません。
営業は顧客ニーズに柔軟に対応する必要があるので、マニュアル通りに進むほど単純ではないからです。
環境の変化や社員の成熟度に応じて、標準プロセスでつくった「型」そのものも変化していきます。標準プロセス資料は、ファストフード店のような型にはまったマニュアルではなく、時々の状況に合わせながら変化・改善させていく「変化対応型の型」だと言えます。
できる営業になるために参考にする「勝ちパターンの基本型」であり、さらに上のレベルや創造型社員を目指す自己研鑽のための「創造的なルーティン」とも言えるものです。
詳しくはこちら → プロセスは人を型にはめてしまうのか?
「習+守・破・離」
「基本の型」の話をもう少し続けます。伝統芸能や武道では基本を学び身につけて初めて、その人なりの創意工夫を行い、技量を高めることができると考えます。『習+守・破・離』という教えです。
創造力というとゼロから創り上げるようなイメージを持つかもしれませんが、100%すべて本人のオリジナルということはあり得ません。信念、思想、哲学、大切にするもの ――― こういった個人の思考は、意識していなくても、先人たちの影響を受けています。これまでの人生の中で学んだり経験したりしたことを基礎にしているものです。
そして、何かを習得し、上達するための近道であり成長を助けるのが「習+守・破・離」です。改善型・持続型なイノベーションが得意な日本人にマッチする学習方法だと思います。
「習+守・破・離」に関する、日本人にとっての象徴的な指摘を引用しましょう。
“日本人は「型」というものが好きな民族だと思います。というのも、まずは「型から入る」というのが、何事かを身につけるうえでの、日本人の一般的なアプローチの方法だったからです。型が多くのファストフードのマニュアルと違う点は、型を身につけることで、型に見合った精神性を持つことが期待されているということです。”(熊倉功夫/静岡文化芸術大学学長)
“「習+守破離」で、まず「型」を“習”う。そして、まず手本となる「型」を身につけて“守”る。型がしっかりと身について初めて、新たな型を超えるさまざまな試みを行う“破”に入ることができる。そして、最終的に“離”として、新しい独自のやり方を創造することが可能になる。”(『型と場のマネジメント』より)
こういった指摘は日本人にはしっくりくるはずです。まず、「基本の型」を整理する。基本に従い、教育トレーニングを行う。共通言語として、日々のコミュニケーションを図る。成功・失敗パターン分析やノウハウ共有を行ながら、生産性の向上を図る。
これが人財育成を効率化しスピードを速めるために行うべき、今時の人財育成メソッドではないでしょうか。
(関連コラム)「習+守・破・離」「人財育成の基本の型(標準プロセス)」
次回は「人財育成の近道 ~ 富士山の五合目までの近道」(仮題)についてお伝えする予定です。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2022年08月25日)