21世紀の人事評価⑪ 会社の魂がこもった評価
(20世紀型評価はアメリカのマネ)
日本企業の成果主義は、多くの場合トップダウンで「先に導入ありき」で進められました。本来なされるべき旧制度の問題点の洗い出しや論議にはあまり時間をかけず、趣旨の理解や組織内の合意がおろそかなまま、制度作りばかりが先行してしまったのです。
コンセンサスの形成がないまま、人件費抑制という裏の目的を隠すオブラートとして、成果主義を“形式的に”導入してしまった結果、業績という「正の成果」ではなく、様々な弊害という「負の成果」が目立つようになりました。評価結果に対する不満の蔓延、チーム力の弱体化、人材育成の怠慢、イエスマンの増加・・・。そして、経営と人事評価に対する不信という深い溝をつくり、信頼をベースとしていた日本の組織の結束力という強さを著しく低下させてしまいました。
失敗の本質は、「ハコモノ」的な形式主義です。日本の経営は「アメリカで流行ったものをよく理解もせず輸入し、上辺だけをマネする」というやり方を何度も懲りずに続けてきました。目標管理(MBO)に対する誤解もその典型例です。目標管理はP.F.ドラッカーが提唱したものですが、本来は組織の業績と個人の成長や価値観が両立するように、目標設定と運用がなされなければ意味がありません。ところが実態は、ノルマ管理やリストラの道具になっているケースが少なくありません。
【21世紀型評価では会社の魂を吹き込め】
これからは、このような反省を十分踏まえ、形骸化したハコモノ人事とは決別する必要があります。また、今の評価制度に問題があるのなら、どこが悪いのか本質的な問題を明らかにしない限り、また別の新しいやり方を取り入れても同じことを繰り返すだけです。これからは、ますます人間性を尊重する“経営の倫理化”が求められる時代です。どんなに優れた理論やツールであっても、その根幹に人を大切にする道徳感や創造性を育む価値観がなければ、人事制度が機能しないのは当たり前です。人事制度という「型」に、自社の人事理念や評価目的という「魂を吹き込む」ことが大切です。そのためのポイントを3つあげておきます。
人事理念の明確化
「社員の人間性を尊重し人財として活かすことにより創造的な成果を生み出す」という人事理念をきちんと示す。
評価目的の設定
「業績の継続的な改善と社員のモチベーション維持」という前向きな目的とする。
運用の徹底
人事理念と評価目的が浸透しそれに沿った評価が行われるよう、根気強く運用を徹底させる。
マネジメント手法を成功させるためのこつは「徹底」。
21世紀型評価では、形式をマネするだけでなく、評価制度に人事理念と評価目的という会社の魂を吹き込むことが求められます。成果主義の次の人事制度ではそろそろ他社のマネではなく、あなたの会社にあった独自のものを創るのです。
(2011年08月19日)