シンプルか手間をかけるか
経営層や人事関係者と情報交換をさせてもらう際に、よく挙がるテーマの一つに「人事評価制度はシンプルなものがよいか、あるいは、手間をかけたものがよいか」という話があります。
シンプル派の主張はこうです。
「管理が楽」
「人が人を評価するのだから、あまり複雑すぎるのはよくない」
「人事評価にかける時間を増やして、業務を妨げたくない」
「精緻なものはマネージャ層のレベルが低い会社では教育や運用が難しい」
「実際は評価の結論は評価者の頭の中で先に決まっていて、評価シートは評価点数を調整する道具にすぎないのだから、手間をかけても意味がない」
精緻派はこう主張します。
「顧客からの要望レベルが上がり業務の内容が複雑化した今、シンプルな評価では限界がある」
「同じ会社の中でも担当業務により評価すべきポイントが異なるので、全社共通のシンプルなフォームではどこにもフィットしない」
「手間がかかるというが、これまで手を抜きすぎていただけではないのか」「今までは言われたことをまじめにこなす人材が評価されたが、現状を打破するためにチャレンジする人財を評価するためには、過去の延長上の評価方ではもはや対応できない」
「現場の実態に合わない形骸化した評価制度を使いながらまじめに評価を行うふりをする“評価ゲーム”をいつまで続けるつもりなのか」
シンプル派は人事評価にあまり重きをおかず従来通りでよしとする「保守派」。それに対し、精緻派は人事評価をもっと積極的に活用して時代や環境の変化に対応すべきだという「改革派」のようにも思えます。
両者の意見は平行線をたどりそうなので、角度を変えて「そもそも何のために人事評価が必要なのか」という視点から考えてみましょう。
人事評価が「人を動かすためのマネジメント手段」であり、その目的が「人財育成を通じて会社の業績を継続的に向上させること」であるとするならば、シンプル派の主張は本質論からはずれていることになります。
(この辺りについては、「なぜ人を評価するのか」で詳しく述べていますので、ご興味あればのぞいてみてください。)
21世紀に入りビジネス環境も大きく変化し、働く人々の価値観やモチベーションの源泉も多様化してきています。多少手間をかけても、業務の実態や現在の働く人々の気持ちに合わせて対応のできる「進化した人事評価制度」が業績貢献度、社員満足度、そして何よりも顧客満足度向上には欠かせないという気がします。
“シンプルで手間はかからないが、どの部門にも合わない人事評価”と“多少手間はかかるかもしれないが、社員のやる気をあげ業績改善を支えることのできる人事評価”。
おかれた業界の環境や会社の方針、あるいは成長段階など前提条件によっても変わってくるでしょう。何に重きを置くかによって答えの変わる究極の選択と言えるかもしれません。
「シンプル派、手間をかける派あなたはどちらですか?」
いや、質問の仕方を別な言い方に変えてみましょう。
「このまま漠然と認識している経営課題を先送りにして失われた20年を更に延長しますか、
それとも、時代の変化に対応して更に会社を伸ばす道を選びますか?」
人事評価にも「ダーウィンの進化論」を適用すべき時期が来ているのかもしれません・・・
(2012年11月09日)