自主性を育て結果を出す“営業プロセス見える化マネジメント”
前回は自主性を育てる仕組みづくりのポイントとして、(1)目的や趣旨をしっかり伝える → (2)指示を具体的にする → (3)モチベーションに配慮する → (4)プロセスを見守る → (5)人事評価できっちり評価する という流れを紹介しました。(詳しくはコチラ→ 自主性を育てる仕組みづくり)
今回はその中で、特に(4)プロセスを見守る = プロセスマネジメントと、(5)人事評価 = プロセス評価できっちり評価する、のところにスポットを当て、フリクレアが得意とする営業分野を中心に突っ込んだ解説をします。
プロセスマネジメントでプロセスを見守る
まず、プロセスを見守るためのプロセスマネジメントから始めましょう。
人財を育成しながら業績アップを目指す上で基本になる考え方が「プロセスマネジメント」です。このコラムの読者であればすでにご承知の方も多いと思いますが、念のためプロセスマネジメントの考え方と定義を明らかにしておきます。
成果を出すために、途中のプロセスを見えるようにして進捗管理することを、プロセスマネジメントと呼びます。プロセスマネジメントは、これまでは個々の社員の属人的なやり方で仕事が進められ、ブラックボックスとなっていた仕事のプロセスを見える化して、結果につながりやすいプロセスがきちんと行われているかをチェックしていく生産性向上や業務改善の方法です。
例えば、営業の場合であれば、できる営業のやり方を標準プロセスとしてわかりやすく「標準化」したうえで「見える化」する。さらに、成果を出すための属人的なノウハウを資料にまとめ、勝ちパターンとして組織で「共有」し、効率よく業績改善につなげる。そして、やるべきことの取組を「プロセス評価」で支える。この一連の流れを通して、自主性を育て人財育成を行いながら、業績アップを図ることが可能になります。
マネジメントを結果の数字や人の行動を管理することのように履き違えているケースがよく見られます。しかし、プロセスマネジメントでは、結果だけや人の性格を管理するのではなく、問題となっているプロセスを見える化して成果を出しやすい方向に導くことが大切なポイントになります。
人事評価でプロセスマネジメントを支える
次は、人事評価 = プロセス評価できっちり評価するについてです。
先にプロセスマネジメントの考え方と定義について述べましたが、プロセスマネジメントを進める中で、いくら経営者や営業リーダーが「プロセスが大切」と唱えても、人事評価の方法が従来通りの結果の数字だけだと、現場の社員にとっては面倒くさそうなことが増えるだけで何のメリットもありません。メリットがなければ、真剣に取り組む社員が少ないのは当然です。このため、プロセスマネジメントを行う本来の意図が理解されずに、失敗パターンにつながるケースも出てきます。
そこで、やるべきこと(= 標準プロセス)の取組の徹底を支えるため、言いかえると、業績改善というゴールを達成するために突き詰めて考えていくと、人事評価の面からもプロセスマネジメントを支えなければならないということに行き着きます。つまり、プロセス見える化と人事評価はセットにしないと効果が弱まってしまうのです。
これが次項以降で解説する営業プロセス見える化マネジメントの考え方の根幹になります。
営業プロセス見える化マネジメント®
ここでフリクレアがプロセスマネジメントを発展させて提唱している〝営業プロセス見える化マネジメント®〟というコンセプトを紹介しておきます。簡単にいうと、コンスタントに成果を出し続けている“できる社員”のやり方を標準化・見える化したうえで、結果だけでなく途中のプロセスへの取り組みを、プロセス評価を中心とした人事評価で支えていくことです。
「営業プロセスの見える化」や「プロセスマネジメント」も基本的には同意義なのですが、プロセスマネジメントと人事評価(プロセス評価)を融合させることにより効果を高めることが特徴です。また、3次元プロセス分析法®でしっかりと標準プロセスをまとめ、人事評価で支えるところが大きく異なる点なので、象徴的な表現を使いその違いを明確にしています。
そして、営業プロセス見える化マネマネジメント®が、効率的に成果を出すための基礎/やるべきこと = 標準プロセスを社員に習得してもらい、自主性を持った人財を育成しながら業績改善という成果を出すための処方箋になります。
プロセス管理や見える化といっても、組織により考え方やレベルもまちまちであり、プロセスの定義や整理がしっかりなされていないケースがほとんどです。プロセスをきちんと標準化しているか、あるいは、何となくプロセスっぽいものでお茶を濁しているかにより、雲泥の差が出てきます。言葉やイメージは同じでも、実態はまったく別物なのです。
尚、このコラムでは文脈に応じて、プロセスの見える化やプロセスマネジメントという表現も併用して使います。
見える化ツールで標準プロセスをまとめる
プロセスを標準化 → 見える化 → 共有化するためには、わかりやすい資料にまとめることが必要になります。〝見える化ツール〟を作成するのです。見える化ツールは、業務の俯瞰図である〝プロセスシート〟と業務の詳細をまとめた〝標準プロセスの手引き〟をセットにしてまとめることをおすすめします。
見える化ツールについて詳しく知りたい方はコチラをどうぞ→ (コラム)「プロセスを見える化するためのツール」
(書籍)『営業プロセス“見える化”マネジメント』
見える化ツールが自律型人財の成長を支援する
標準プロセスをまとめた見える化ツールは、基本を徹底するための「型」であり、自分で考え行動できる自律型人財の成長を支援します。「プロセス見える化」が育成効果を最大化するのです。 若い頃から本当に自主性を持った人財はそう多くはいません。確率論的は200~300名に一人程度でしょうか。正しい型を教えることができれば、成長スピードを上げられるので、結果的に自主性も早く育まれるのです。
型の長所ばかり主張すると異論があるかもしれません。よくあるのが「型にはめるより社員の自主性を大切にすべきではないのか。自分で考えなければ本当の成長にはつながらない」というもっともらしい意見です。
ところが、「自主性にまかせて社員一人ひとりに考えさせるのが、人道的で育成には有効だ」という考え方は、残念ながら全ての社員に当てはまるわけではありません。自主性にまかせてうまくいくのはせいぜい組織論で言うところの2:6:2の上位の2割。その中でも実績に裏付けされた本当の自主性を持ち、自律型人財とみなせるのは2~3%程度、多くても数パーセントです。
人財育成は性善説による理想論だけでは成り立ちません。現実論の世界です。社員の実際のレベルと実力(能力、やる気、自律性、自己研鑽・・・)を見分けることが先決です。やみくもに自主性にまかせれば、収拾がつかなくなりマネジメントどころではありません。
本当にできる社員であれば正しいプロセスを見つけ実践できるかもしれませんが、普通の経験や知識不足による思い込みで、自分が得意、もしくは、好きなプロセスを良かれと思ってやっているものです。自社の組織の中を見渡してみても、本当に自主性を発揮して働いている社員は限られているはずです。自主性を重んじすぎると逆に人が育ちません。“自主性の罠”ともいえるものなのでご用心を。(→ 自主性の罠については、関連コラム「自主性の罠? ― 創造性は基本習得の後に生まれる」に詳しく記載しています)
「人事評価」の大切な機能
頭ではわかっていてもなかなか変えられないのが人事評価です。放っておくと、人件費削減やリストラの道具と化してしまいます。かつての成果主義、そしては、今はジョブ型雇用の裏の目的がそうです。
そうならないために改めて問います。人事評価の「何のために人を評価するのか?」と。基本的な質問ですが、意外とその本来の目的を見失っている点です。
人事評価の本来の目的は、人財を育て経営課題を解決することです。人件費をコントロールし、昇給・昇格を決めることが全てではありません。人事評価は経営課題を解決し目標を達成するための大切なツール。そして、永遠且つ最大の経営課題は継続的な業績改善です。
フリクレアでは、人事評価を「人を動かすための最も強力なマネジメント手段」と考え、「業績の継続的向上を人財育成を通じて支え、社員の物理的な報酬の適正化と心の報酬の充実を図る“成長支援制度”」と定義しています。
(心の報酬については、次回コラムで詳しく解説します)
人事評価制度は会社の利益には直接貢献できないと勘違いしている人がいます。しかし、そういった誤解をしている人には、人事評価が持つ極めて大切な4つの機能や目的に気づいてもらいたいものです。
①人事評価は会社がめざす方向に社員をリードする「究極のマネジメント手段」。
②目指すべきゴールは「人的経営資源の最大活用による経営課題解決」。
③人事評価は「人財育成のための成長支援制度」と言い換えられる。
④あるいは「ビジョンと目標に向けて人を導く羅針盤」とも言える。
プロセス評価を進化させる
こういった動きに呼応すべく、今や時代は「プロセスの標準化」「人財育成」と「人事評価」をセットにした新しい本当のプロセス評価にレベルアップする、という新しいステージに入ってきています。そのためフリクレアでは〝進化したプロセス評価®〟という独自のプロセス評価を提唱しています。
進化したプロセス評価というのは、目に見える仕事の結果だけを人事評価の対象にするのではなく、結果に至る途中の「プロセス」を見える化し評価することで、社員のモチベーションを高めながら、より公正かつ客観的な評価を行おうとするものです。
そのために、会社の業績改善や業務効率向上につながるプロセスをまず標準化します。さらに、社員が実際行ったプロセスを、データ化したりKPIで測り見える化します。そしてその結果を、人事評価シートに可能な限り定量的に反映して社員の評価を行うのです。
進化したプロセス評価とは、あいまいな主観による定性評価ではありません。あくまでも見える化した標準プロセスを基本とするものなのです。具体的なプロセス評価項目を人事評価に取り入れることで、できるだけ評価者の好き嫌いといった感情を排除し、評価に対する納得感を高めることが可能になります。
それにより、普段成果を出すためにがんばっている努力が ――― 会社が認めた正しいプロセスにきちんと取り組んでいるのであれば ――― 認められるようになります。これまでは、縁の下の力持ち的な業務を任されていても目立たなかったり、自己アピールが苦手だったり評価で損をしていた人でも、その働きが見えるようになり貢献度が認められるようにもなります。進化したプロセス評価は、業績をアップさせ会社、そしてそこで働く社員を元気にするモチベーション向上の役目も果たします。
進化したプロセス評価の3つの特徴を整理すると以下のようになります。
①成果につながる「できる社員のノウハウ」を、標準プロセスとして整理する ・・・ プロセス標準化
②標準プロセスを基本の型&共通言語として人財育成に活かす(進化したコンピテンシーモデル) ・・・ 人財育成
③結果だけでなく標準プロセスの取組を見える化して人事評価にリンクさせる・・・ 進化したプロセス評価
前回のコラム「自主性を育てる仕組みづくり」の中で、重要なポイントとして紹介した(4)プロセスを見守ると、(5)人事評価できっちり評価する / 自主性を損なわない評価制度について、自主性を育てながら結果を出す営業プロセス見える化マネマネジメント®という具体的な解決策を示しました。
次回は順番は前後しますが、前回コラム(3)モチベーションに配慮するに関連して、このコラムの中で言及しました「心の報酬とモチベーション」についてお伝えしようと考えています。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2021年03月25日)