成功するプロジェクト体制
プロセス評価導入のプロジェクトを進めるにあたっては、メンバー選定がプロジェクトの成否を決定する非常に重要な部分です。「事業は人」と言われるように、プロジェクトもまたその選ばれたメンバーに大きく依存するのです。
メンバー構成は、経営・マネージャ・現場の3階層を中心に、人事部門などのアドバイザーが脇を固める体制をおすすめします。
経営層
人事評価は経営の根幹に関わる重要課題ですから、経営層(できれば社長)から一人は加わり、目指すべき会社の評価基準の方向性を明確にプロジェクトメンバーに伝える必要があります。また、常に状況を把握し、社内の抵抗勢力を叱る憎まれ役になったり、社内関係者の中で板挟みになりがちなプロジェクト推進メンバーを鼓舞してもらう役割もあります。大きな会社であれば、対象となる営業部門の取締役や本部長クラスの関与も求められます。
マネージャ層
実質的なプロジェクトのリーダーや仕切り役になる階層です。例えば、経営企画や営業総括・推進など、組織横断的・クロスファンクショナルな立場と視点で動ける部門の責任者が適任です。経営層の意向の実現に向け、関係部署のキーマンに粘り強い説得を行うなど、プロジェクトの円滑な推進をリードする役割を果たします。将来の経営を担う幹部候補が最適です。
現場層
例えば営業部であれば、トップクラスの成績をコンスタントに達成している優秀な部課長クラス。あるいは、その時点でトップセールスとして実績を上げ、皆が一目おくキーマンなど、現場の実態に精通し勝ちパターンがよくわかっている人を必ず選定してください。
営業の中心メンバーを選ぶのは、反対勢力になるのを防ぐという意味もあります。この人達が、「プロセス評価なんか本当に必要なのか?忙しいのに面倒くさいし、今までのやり方で十分だ」というような否定的な意見を口にし始めると終わりです。そうなると、ほかのメンバーも現状維持の方が楽なので、同調して反対派にまわってしまうのです。現場を敵にしてプロジェクトがうまくいくはずがありませんので、現場キーマンの人選は慎重に行いましょう。
なお、「人当たりはいいし、時間もある。しかし、営業実績は今一つ」というような営業部においてあまり実力・影響力がないタイプの人は、決して選ばないようにしてください。
人事部門
アドバイザー・スーパーバイザーとして、人事部門の参加も欠かせません。人事評価のシステムをつくるわけですから、人事のキーマンも参加するのは当然ですが、現場の実態は現場の人たちの方が詳しいため、パイロットの段階では一歩譲ったスタンスが必要になります。成果主義導入の失敗にみるように、現場を知らない人事があまり前に出すぎると現場の反発を招き、逆効果になる恐れがあります。役割としては、以下の3点があげられます。
全社的な人事改善の観点から、プロセス評価設計の内容をチェックする
パイロットプロジェクトの後、全社展開ができるようその効果を見極める
必要に応じてアドバイスするなど、プロジェクトの円滑化を促す
どの層のメンバーを選ぶ際にも注意すべきことは、なにより、人事評価や業務改善についての問題意識が高い人でなくてはならないことです。現状を改善する必要性を感じていない人や、問題意識が低い人、何か新しい制度(ツール)を導入しさえすればいいと考えている人、何事にもネガティブな考えをもつ人などは不向きです。