本の感想を紹介します(2)
5月に読者の方からのコメントを紹介しましたが、その後もいくつか感想・所感を頂いています。その中で、非常に洞察力の深い印象深いものをご紹介します。
【人事評価の分野は、未開・迷いの分野であることを実感しました】
数々の業務に役立つ気付きの文章表現がありつつも、誰に対して、どうしたら良いか、というメッセージの矛先が分からない本であった・・・というのが、最初に通読した時の感想です。
どの立場の人に向けて書かれているのか?で若干戸惑います。経営者?営業担当の役員?人事担当の役員?営業部長?営業課長?・・・私の中で、5つの登場人物が入れ替わり立ち代り出現しました。一度目は、それが気になって、とても読み辛いものでした。
しかし、再度よく読むと、それはこの本のメインテーマである「プロセス評価」という一つの言葉が、条件がそれぞれ違う営業現場で、売上実績だけを評価する「成果主義」と対比する使われ方、売れる仕掛けとしての「販売戦略、販売のノウハウ」の補足ツールとしての使われ方、の二重構造になっているからであることに気付きます。それが分かると、会社の各役割で、「プロセス管理・評価」の“2つの意味での必要性”という提言を活かすには、どのような課題があるか?を考えながら読み進めると、数々のダイヤモンドの様なキラメキのある文章に気付き、それが自分の中で課題解決のヒントに変わっていきました。
この本のすばらしい所は、プロセス設計をする過程で、成果を上げる(上げるであろう)プロセス設計に参加した人や設計に貢献した人にも着目している点です。これは、著者が、机上の理論で書いているのでなく、実際の生の企業とそこで働く社員が、どんなものであるか、という深い洞察力があってこその視点であろうと思われます。
しかし、人事担当役員がこれを「よし」、とするかは疑問です。なぜなら、彼らは、潜在的という強い無意識化の中に、評価基準を自分で判定できることを強く望んでいるからです。
著者が卓越していると思われるのは、そのことをある程度知っているが故に、経営者に関心が向くように、「プロセス管理・プロセス評価」が、「販売戦略、販売のノウハウ」と同様に位置づけされるモノとも捉えられるように書かれている点です。 これは、「プロセス管理」が、成果を上げる有効な打ち手であることを、・・・つまり、成果を生み出す前段階の“良質な畑の作り方”の指標として、評価基準に昇華させるために、この視点を経営者に意識させようと試みていることです。これも企業というものを良く知っている著者ならではのアプローチだと思われます。この「プロセス管理・評価」が役立ち、浸透させる前提条件(ユーザの業種、取り扱い品目やサービス、販売形態、ユーザの拠点規模、企業風土・文化)を具体化させながら、導入の障壁と定着の打ち手を是非、次回作で期待したいと思います。
最後にこの本を読んで気づいたのは、この人事評価の世界は、著書でも触れられていましたが、あまり手垢の付いていない、未開の分野であることです。
「なるほど、この分野は、あまり誰も手を出していない、迷いの分野なんだな・・・」と言う事を実感いたしました。
(オフィス機器製造 経営部門勤務)
(2009年06月26日)