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いつの世も変わらない人財育成の本質 ― 人財育成(5)
結果を出さない人間にものを言う資格はない
営業リーダークラスには、「ゆとり世代」や「Z世代」というと、理解しにくい印象があるかもしれません。しかし、冷静になり自分が新人だった頃におかしいと感じたこと、あるいは、本当はこうやって教えて もらいたかったことを思い出してみてください。
私自身の経験を紹介しましょう。私は1961年生まれです。新人類世代(1961 ~ 1970年生まれ)の1年目に当たります。
大学を卒業し、やる気と希望に満ちて会社に入り、早速仕事を覚えようと燃えていました。ところが、課長から言われた最初の言葉は、何と「うちは何も教えないから」・・・。
当然、業務のやり方を示す資料などまったく存在しません。教育は2年上の先輩のОJTのみでした。こちらから聞けば書類のつくり方などは教えてくれますが、どうにも仕事の全体像がつかめません。やらされている仕事の位置づけや重要性がまったくわからないのです。
そこで仕事への理解を深めたいと思い、何か資料がないか先輩に尋ねてみました。すると、「これでも読んでみれば」と、ドサッとファイルの束を渡されました。少し気後れしながらも早速読んでみましたが、脈絡のない文章と枝葉の話ばかりで眠たくなるばかり。
それでも他に参考文献はないので仕方なくファイルを読み解いてみると、業務自体はパターン化が可能なのに、まとめられておらず、同じような過ちをくり返していることに気づきました。
そこで、「標準的なやり方を資料にまとめて、同じミスをくり返さないように、プロセスを改善した方がよいのではないでしょうか」と提案してみました。
すると、上司からは「難しいことを言うやつだな。営業は結果がすべて。まずは結果だ。結果を出さないやつには生意気なことを言う資格はない。プロセスを語るなど10年早い」と怒られました。
納得がいかないので他の人にも相談してみたものの、結局まともな答えは返ってこないまま・・・ 「情報やノウハウの共有」を真面目に取り上げようという雰囲気はありません。むしろ当時は、情報やノウハウを必要以上にもったいぶり、あえて隠しているようにも感じました。
新人営業の素直な疑問
さて、昔の話はこれくらいにして現在に戻り、当時私が感じた疑問を整理すると、次のようにまとめられます。
・仕事の全体像、やり方がわかる俯瞰図、手引書がない
・担当業務の位置づけや優先順位がわからない
・役職ごとにやるべきことや将来像が見えない
・上司が求める、あるいは、評価される行動パターンが不明確
・業務の標準的なやり方が存在しないので、各人が一から考え、試行錯誤するしかない
・その結果、非効率なやり方をくり返し、効率が上がらず進歩もない
・「どうしてもう少し頭を使って考えないのだろうか?」という漠とした疑問はみんなの頭の中にはある
…などなど。しかし、これらはよくよく考えてみると、「昔から、そしてこれからの時代も、育成される新人や20代の若手が求めるものは同じではないのか」という仮説にたどり着きます。
効率的に人財育成するためには、「俯瞰図や手引書といった業務プロセスを見える化するツールは、組織として当然そろえておかなければならない必須アイテムなのではないか」。そう考えると解決のヒントが見えてきます。
さらに言えば、業務プロセスを見える化するツールは、これまでは見よう見まねや我流で人財育成をせざるを得なかった、ミドルクラス以上の営業リーダーにとって福音の書になるはずです。あらためて業務全体を見直し、効率的な営業を行なうためのマネジメントツールにもなるわけですから。
「精神論・根性論」 より理論的な教育
これに関連して学生時代の体育会系クラブ活動について疑問に感じていていたことを思い出しました。理不尽な下級生指導や扱い(いじめ)に対する行動が2派に分かれることです。
典型的なのが、自分が先輩からいじめられたから、下級生にも同じことをするタイプ。つまり、後輩をいじめる「同じことをくり返す派」です。
もうひとつは、体育会的な理不尽ないじめはやめた方がいいと考えるタイプです。適度な先輩・後輩の関係は維持しながらも、合理的思考で悪い慣習を変えていこうとする「少しでもよくする派」です。
今、求められるのは、後者であることは異論のないところでしょう。
管理する側の視点だけでなく、育てられる側、つまり若手の側の視点に立つと、意外に見落としがちな人財育成におけるキーポイントが見えてきます。営業リーダーは自分が部下だった頃、特にまだ業務の全体像がわからなかった新人や20代だった当時の気持ちをまず思い出してみることです。
営業リーダーも自分が若かった頃、何も与えられないまま理屈の通らない精神論や根性論で理不尽に厳しく育てられるより、体系立てられた資料を使った理論的な教育を受けたかったはずです。
標準化とは、今日入社した新人でもわかるように仕事のやり方が整理されていることなのです。
人財育成というテーマに関し、ゆとり世代・Z世代に象徴的にスポットを当てましたが、実は、「新人 → 20代の若手 → 中堅 社員 → 課長クラスの管理者 → 部長以上の営業リーダー」という、すべての階層に共通する本質的な課題と解決の糸口の話だとも言えます。
次回は人財育成シリーズの最終回として、「(仮題)人財育成の4点セット」をお伝えする予定です。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2022年11月25日)