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21世紀の人事評価⑤ 努力する人が報われる評価
(20世紀型評価では昇進する人が決まっている)
中堅以上のたいていの会社には、立派に整備された人事評価制度があります。しかし、悲しいことに「定められた評価ルールと、実際行われている評価は関係ない」、あるいは「別な評価ルールが存在している」という制度の形骸化が存在しています。
ある大手通信関連企業では、将来の幹部候補生になった社員は、成果には関係なく昇進していきます。規定では、2年以上A評価をとることが昇進の条件となっています。しかし、幹部候補生は決められた人事評価ルールとは関係なく順調に昇進しくのです。一方で、他の一般社員は成果主義のルールに従い厳しく評価されます。いったんレールから外れた社員や中途入社の社員は、どんなにがんばっても幹部に登用される望みはありません。
成果や努力とは関係なく昇進する人が決まっているのであれば、その他の社員のモチベーションが保てるはずがありません。人財であるはずのその他多くの社員は、その力を100%発揮できないままくすぶるだけです。あきらめ感が蔓延し、「仕事はほどほどにして人生を楽しもう」という後ろ向きのワーク・ライフ・バランス志向で、自分をなぐさめるしかありません。
【21世紀型評価は成果に向けて努力する人を評価する】
幹部候補生とその他の社員の実力の差は、それほど大きくないというケースが大半です。若い頃は優秀に思えた人間が、自分の力で成し遂げた真の実績を経験しないまま歳をとっただけで、マネジメント能力を身につけている保証はどこにもありません。あるいは慢心して、自己研鑽を怠っている場合もあります。
せっかく立派な人事制度をつくっても、健全な競争原理が働かない運用ならば、一般社員のやる気を削ぐだけで、人財という大切な会社の財産のもてる力をフルに活用することはできません。
「先の人事が見えている」というのは、組織が崩壊するパターンの一つです。反対に、伸びる会社では、努力して実績を上げた人間を登用するので、皆自分にもチャンスがあると前向きの思考になり、組織が活性化されます。努力して成果を出せばその分評価される、挑戦して失敗しても挽回のチャンスがある、逆に、出世コースに乗っていても努力を怠るなどの油断は許されない、という公正な「信賞必罰」が本来あるべき評価の姿です。
P.F.ドラッカーは『現代の経営』の中で、「優れた人間ほど新しい多くのことに挑戦するため間違いが多い。逆に一度も間違いをしたことのない者は凡庸であり、トップマネジメントの仕事につかせてはならない」と指摘しています。
現場から指摘される問題点をカイゼンしながらその運用を徹底し、社員に期待感と適度の緊張感を持たせなければ、人事評価の存在意義はありません。評価の狙いは、社員のモチベーションを上げて成長を促し、より大きな成果を引き出す正のスパイラルをつくることなのです。
社員の創造性こそが、困難な局面を打開し競争力を生み出す時代です。社員の可能性をいかに効率的に引き出し活用できる組織をつくるために、人事評価の果たす役目はこれまで以上に大きいと言えます。
21世紀型評価は、成果に向けて努力すれば報われるという“よい緊張感”を保ちながら、全社員の可能性を活かすものでなければなりません。
(2010年12月03日)