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コラム

(営業の課題解決④) 残業を減らしながら業績を上げる

 営業課題の一つとして「残業問題」にも触れておきましょう。業績アップという営業本来の目的には、直接関係ないように感じるかもしれません。ところが実際は、営業力強化を図るための前提として、無視できない重要な課題なのです。

 

 「やるべきことに集中して取り組み早く帰るのがよい」。そのことは営業現場の人々もわかっているのですが、「やることが多すぎて忙しくて、残業削減に取り組む時間がない」というのが現場の本音です。

 ではどうするかというと、まず残業の原因となっている業務をプロセスで特定。次に、「やるべきこと」と「人にまかせること」を明確化。さらに、分業等の仕組みで営業員の負荷を減らすために、「やるべきこと」に集中できる環境づくり。これらを、営業力強化の前に行わなければなりません。

 

 こういった土台整備をスキップして営業強化施策に取り組ませようとしても、時間がないことを言い訳に、結局うまくいかないケースが実際はほとんどです。

 残業を引き起こす真因(ボトルネックのプロセス)の特定と除去は難しく、手を入れにくいものです。「顧客対応が優先」「従来のやり方を変えられない(変えたくない)」「人手が足りない」等々がよく言い訳に使われる言葉です。

 そのため、根本問題は手つかずのまま、あるいは、中途半端な対処療法にとどまってしまう。ほとんどの営業リーダーが抜本的な解決策を見出せぬまま、悩み続けなければならないという悪循環に陥りがちです。

 

 また一般的には、残業削減というテーマになると、新聞や雑誌などではなぜかこういった根本原因までは踏み込まず、小手先のテクニックばかりが取りざたされています。例えば、「夜一定の時間(7~8時)を過ぎると消灯して回り強制的に残業をやめさせる」「早朝出勤を奨励する」「業務の効率化を社員一人ひとりの創意工夫任せる」等々。

 しかし、残業自体はあくまでも結果的な現象です。推進者はそれなりに真剣に考えてのことだと思いますが、はっきり言わせてもらうと、このようなレベルの対処療法では効果はほとんど期待できません。

 

 私から見れば肝心の仕事のやり方の見直し(プロセス改善)に切り込む視点が欠如しているのが、不思議に思えて仕方がありません。冷静に考えれば、本質的な業務のプロセスにメスを入れないかぎり、実態は何も変わらないことになぜ気づかないのでしょうか?

 残業が減ったというそれなりの効果を会社がアピールしている場合もありますが、その実態は甚だ疑問???です。早く帰って人生を楽しめるのはトップなど一部の幹部クラスと管理部門だけ。営業系を中心とする多くの現場社員は、自宅や近くの喫茶店など会社外での残業が増えている、という笑えないこぼれ話がよく聞こえてきます。

 

 仕事のやり方の見直し以外にも、社員もタイプ別に分けて考える必要があります。十把一絡げの対処策では対応しきれません。分類は次の5タイプ。 そして、———以降は各タイプの問題点です:

 

 ①やるべきことをせずに帰る人

 ——— 顧客と約束したことをやらない、期限を守らない、仕事の質が落ちる。

 ②持ち帰って家で仕事をしている人

 ——— 隠れ残業は、いまだに結構多い。

 ③帰りたくても帰れない人

 ——— キーマンには重要な仕事が集中。その人しかできない仕事なので人にふれず、帰りたくても帰れない。

 ④頑固に残る人

 ——— 従来のやり方を変えない、あまり重要でない業務に時間をかけすぎ。

 ⑤効率化を図る人

 ——— 個人の裁量と努力だけでは限界がある。

 

 では残業を減らしながら業績を上げるには具体的にはどうすればいいのか?その処方箋は、以下のようになります。

 

 〔解決のヒント〕

 残業の原因となっているプロセス(ボトルネックになっている業務)を明らかにすること。

 

 〔解決の方向性〕

 そのプロセスを得意な社員に集中して任せるなどして、分業やチームで業務全体を回すようにする。

 

 〔解決のシナリオ〕(段階別)

 ①基本ルールの徹底(第1段階):

 例えば、残業の基本ルールは事前申請して許可を得てからのはず。

 この原則の徹底だけでも、10~20%程度の明らかに無駄な残業減らしは可能。

 

 ②残業の「見える化」(第2段階):

 残業している部署や社員を、実名入りで実際の残業時間を公表。

 全社的な会議などで実名を公表すると、恥をかいた責任者が必死になって残業減らしに努めるので一時的には必ず減り、緊張感を与えるには有効。

 しかし、業務のやり方の実態が何も変わっていなければ元に戻るのは時間の問題。

 

 ③仕事のやり方の見直し・カイゼン(第3段階):

 ボトルネックになっているプロセスを明確にし、仕組で負荷を減らす(組織的分業)。時間と手間はある程度かかるが、これをやらなければいつまで経っても何も変わらない。そもそもここにメスを入れるのが経営や組織のリーダーの仕事。

 

 ④制度化(第4段階):

 本来であれば、第1~3段階の前準備を行ってから正式に制度化すべきだが、トップからの掛け声のもと、対外的なニュースづくりを急ぐあまり、一足飛びに制度化だけを急いでいるケースが多い。これでは本当の成功はおぼつかない。

 制度化の前に、まず残業の元凶を探るためのプロセスの見える化。

 残業減らしが最終的な目的ではない。従来のやり方を見直し、より効率的なやり方で、不要な残業を減らしながら今まで以上の成果を上げることが、本当の生産性向上であり目指すべきゴールのはず。

 残業は一時的に減ったが比例して業績もダウンし、また元に戻ってしまった、あるいは、逆行してしまった例も表には出てこないが実際は多い。


(2016年07月08日)

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