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コラム

営業プロセス見える化とSFA/CRMの関係

 前回はSFA/CRMが活用されない9つの失敗パターンをご紹介しました。きれいにまとめられた成功パターンではなく、みんなが隠したがる失敗パターンから説明するという、ちょっとイレギュラーな入り方をしましたが、今回は営業プロセス見える化とSFA/CRMを中心とした営業支援システムの話をします。

 

前回お伝えしたかったポイントのひとつは、SFA/CRMはしょせんハードであり、肝心なのはその上にのるソフトだ」ということでした。今回は、そのソフトとハードの関係、つまり「営業プロセス見える化とSFA/CRMの関係」を深掘りしてみます。

 

「プロセス見える化」で、ソフトの部分 = 人財育成の基本の型をつくる → ②その型を活用して「人財育成」を行う → ③型を実践するためのプロセスマネジメントを「人事評価」で支える ④SFA/CRMなどの営業支援システム」を、①~③を連携させ業績アップを支えるためのプラットフォームとして活用する ―― こんな考え方でフリクレアが提唱する“業績アップの4点セット”をご紹介します。

 

 業績アップの4点セット

Withコロナの時代におけるプロセス主義®の4点セット)

 

営業プロセス見える化とSFA/CRMなどの営業支援システムとの関係の説明をするわけですが、その基本コンセプトを下の(図1)に示します。

【プロセス見える化 + 人財育成 + 人事評価 + 営業支援システム】が業績アップの4点セットになります。

 状況や文脈に応じて、時に「人財育成のための4点セット」や「プロセス主義®4セット」と言い換えられます。今であれば「Withコロナの時代におけるプロセス主義®の4点セット」という表現の方が関心が高いかもしれません。

 

 ※プロセス主義®とは、「見える化」と「プロセス評価」をセットにした、ポスト成果主義を担う新しい業績改善と人事マネジメントのコンセプトのこと。結果を担保するプロセスを見える化した上で、人事評価とリンクさせ〝進化したプロセス評価®〟で人財育成と業績アップを支える点が特徴。

  

 業績アップのためには、人財育成による営業強化・底上げが欠かせません。営業支援システム導入をする際、システムだけではなかなかうまくいきません。4点セットによる“成功の秘訣”についてこのあと詳しく解説します。

(図1)業績アップの4点セット

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 まず、4つの要素について簡単に説明します。

【①プロセス見える化】

「できる営業」の行動プロセスや勝ちパターンを明確にして、「人財育成の基本の型」をつくる。

【②人財育成】

「人財育成の基本の型」(営業の基本の型)を研修やOJTで教え、日々の営業で実践、プロセスマネジメントによる人財育成に活かす。

【③人事評価】

結果の数字だけを追い求める〝誤った成果主義〟ではなく、「プロセス評価」で見える化した標準プロセスやKPIを評価項目に反映して、正しいプロセスへの取組、実践、徹底を支える。

【④営業支援システム】

SFA/CRMなどの営業支援システムを、<①プロセス見える化 + ②人財育成 + ③人事評価>を効率的に連携させ業績アップをスムーズにするためのプラットフォームとして活用。

 

①プロセスの見える化

 

「できる営業」(トップセールス)のやり方をヒアリングして、勝ちパターンのプロセスを標準化します。整理した標準プロセスを〝見える化ツール〟という資料にまとめて、「人財育成の基本の型」「営業の勝ちパターン」「仕事を進めるための共通言語」「営業の虎の巻」として活用します。

 このように見える化ツールが人財育成のベースとなります。人事評価で評価すべきプロセスを明確にします。さらに、営業支援システムというハードに、その会社の魂を入れるソフトとなります。

 

プロセス見える化が業績アップの4点セットの1番最初に来るのは、まず以下の4つの必要性を満たすためです。

● 業績=結果を効率的に出すために必要な「人財育成の基本の型」を、まず明確にする必要があること。

●次に、部署や研修・プログラム内容によってバラバラな育成の考え方を統一し、研修テキストの内容をその会社の実際の業務に合わせたものにするための「共通コンセプト」が必要であること。

●そして、研修やOJTなどの人財育成施策や人事評価をスムーズに連携させるための「つなぎ役(橋渡し)」が必要であること。

●さらに、コミュニケーションのずれを少なくし、組織力強化につなげるために、仕事の課題や改善点を話し合うための「共通言語」が必要であること。

 

SFA/CRMなどの営業支援システムで、普通はブラックボックスになっているプロセスへの取組をデータで見える化することにより、改善点を見つけやすくなります。加えて、やるべきことができているかの客観的な確認や、できる営業とできない営業の行動パターンの違いを分析できるようにもなります。

 

②人財育成

 

まず人財育成に関するよくありがちな誤解について触れます。人財育成というと、システムよりまず「研修」を連想しがちです。ところが、実は人財育成は研修だけではうまくいきません。人財育成 = 研修ではありませんし、研修をやるだけでは残念ながら何も変わりません。

 

もちろん研修自体は、それなりによく考えられたものであり、内容も充実したものが多いのですが、どんなによい研修プログラムでも、1回限りの単発の研修だけでは打ち上げ花火のようなもので、1ヶ月もすればそのほとんどの内容を忘れてしまいます。忘却曲線の話ですね。

 

研修を受けた人は学んだことをすぐ実践してみようとやる気満々でオフィスに戻るのですが、上司から「ところで、今月の数字はちゃんと行くんだろうな?」という一言で夢は覚め、いつもの目先の数字ばかりを追う現実の世界に引き戻されます。

 

また、外部講師が一般論やその人の持論をベースにした研修の場合は、研修を受ける会社の業務内容や実態を良く知らず言葉も違うため、心に刺ささりにくいものです。

 

じゃあどうするかというと、(図1)で示すように「プロセスの見える化」、「人財育成」、そして、「人事評価」を連携させてセットにし、継続性を担保することが求められます。

 

まず、研修プログラムをつくる前に、見える化で「人財育成の基本の型づくり」をしっかりやる。人財育成の基本的なコンセプトやベースを統一した上で、研修で勝ちパターンや効率的に成果を出すためにやるべきことを、抽象論や精神論ではなく、科学的・具体的に教える。人財育成の基本の型 = 「見える化ツール」を実際の営業活動の中で実践し、試行錯誤を繰り返しながら身につけさせる。

 

加えて、見える化ツールを活用して「職務定義書」を作成する。営業支援システムでプロセスやKPIへの取組をデータ化して事評価に反映し、強制力やメリットを与えながら支え継続性を担保する、という下支えの仕組みが必要になるわけです。人事評価(プロセス評価)については、次項でさらに詳しく述べます。

 

繰り返しますが、研修をやっただけでは何も変わりません。その後の継続性をいかに担保するかが成功の秘訣です。プロセス実践を継続させ、組織に浸透させるための基本コンセプトが、上の図で示した業績アップの4点セットというわけです。

 

③人事評価(プロセス評価)で支える

 

また、人事評価の面からも業績アップを支えていく必要があります。例えば、業績改善のためにプロセスマネジメントを導入しようとして、経営者や営業リーダーがいくら「プロセスが大切に」と唱えても、人事評価が従来通り〝結果の数字〟しか見ていない場合、営業にとっては面倒くさいことが増えるだけで、何のメリットもありません。

メリットがなければ、真面目に取り組もうとする社員が少ないのは当然です。そのため、本来の意図が理解されずに、「また、上が変なことを言い出したよ・・・、忙しいから適当にやっておこう」くらいにしかとってもらえず、失敗につながるケースも出てきます。

あまり指摘されませんが。プロセス評価で支えることはとても重要なのです。システム導入の目的と、人事評価が合っていないという問題。これを「人事評価のアンマッチ」といいます

 

だから、人事評価でも営業強化や底上げを支えなければならないのです。 ただ、問題提起だけしても仕方がないので、対応策も説明しておきます。フリクレアでは「見える化」と「プロセス評価」をドッキングさせた〝進化したプロセス評価®という独自の評価制度を、提唱しています。その3つの特徴は以下の通りです:

 

①結果を担保する「できる社員のノウハウ」を、“標準プロセス”として整理する

②標準プロセスを、”基本の型”&”共通言語”として人財育成に活かす

③標準プロセスへの取組を、データ化&見える化して、人事評価にリンクさせる

 

営業支援システムは、こういったプロセス評価のデータ収集などにも使える、ということも憶えておいてください。

 

(図2)プロセス評価で業績アップを支える

img src=”processhyokagyousekiup20200925” alt=” プロセス評価で業績アップを支える”/

 

④営業支援システム

 

SFA/CRMなどの営業支援システムは、この【プロセス見える化 + 人財育成 + プロセス評価】を効率的に連携させていくための大切なプラットフォームということになります。

 今回のテーマである「営業プロセス見える化とSFA/CRMの関係」という視点から整理すると、プラットフォームとしての役割は以下のようにまとめられます。

●ブラックボックスになっているプロセスを、SFA/CRMで見える化することにより、改善点を見つけその対策を検討し、業績アップにつなげやすくなる。

●標準化プロセスへの取組ができているか、「やるべきこと」ができているかの確認、「できる営業 vs できない営業」の比較や行動パターンの分析ができる。

●標準プロセスやKPIデータを定量評価要素として、人事評価(プロセス評価)にも活用できる。

 

最後に、注意点にも触れておきます。大手・中堅企業になると前回ご紹介したような失敗パターンを繰り返しているので、だいぶ学習効果が進みさすがにSFA/CRMなどのツールを入れれば、魔法の杖よろしく「すぐ業績がよくなる・・・」というような勘違いは少なくなりました。

 とはいえ、いまだに「しょせんツールだから」とわかったように唱えながらも、実際やっていることは社内でコミットしたスケジュールなどにひっぱられ、本格的なプロセス設計のステップを抜かして、いきなりツールのリニューアルに走ってしまっている例も少なくありません。

頭でわかっていても、いつの間にか目的がすり替わり、システム設定のための業務要件定義が主な関心事になりがちなのです。たいがい無理なスケジュールを引いているので、「使われていない営業システムを何とかしろ!」「今期中に新しいシステムを構築せよ!」と会社からプレッシャーをかけられると、宮仕えの身としては逆らえずに期限内にシステムを構築することが目的化するわけです。

 失敗パターン同様、わかっているつもりでも陥りがちなパターンなのでお気をつけください。システムの導入プロジェクトに没頭すると、視野が狭くなり自分では正しい方向に行っているつもりでも、気づかないうちに危ない崖の方向に歩いているものです・・・

(注意点)営業支援システムはプラットフォームであり目的ではない

 

以上、今月は営業プロセス見える化とSFA/CRMの関係について解説しました。繰り返しになりますが、プロセス見える化でソフトをしっかり設計していないSFA/CRMは、魂の入っていない丼柄にすぎないので失敗パターンに陥りやすいのです。

くれぐれもSFA/CRMの項目設定のためだけの、ショボいプロセス設計でお茶を濁さないようにご注意ください。このプロセスで手を抜くと、後工程の項目設定をどれだけ一生懸命になってもシステムが活用されないという報いが返ってきます。問題の本質は常に前工程(最初の方のプロセス)にあります。

 

 

今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

次回は<営業変革を成功に導く、『営業支援システム』活用法>というテーマで1年前に講演を行った際の、受講者の方々の声を紹介し、SFA/CRMを中心とする営業支援システムの再構築に悩まれている方々の参考になればと考えています。

 

⇨ コラムへのご意見やご感想は info@flecrea.com 

 

()フリクレア 代表取締役

山田和裕


(2020年09月25日)

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