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プロセスの見える化がなぜ必要なのか?
今回は、「プロセスの見える化がなぜ必要なのか?」というそもそもの疑問について考えてみたいと思います。
フリクレアは、①結果を出すための「プロセスの見える化」と、②見える化したプロセスを人事評価に連携させた「進化したプロセス評価®」。この2つを事業の柱とする、プロセスコンサルティングというニッチな仕事を行っています。
特に営業プロセスの見える化にこだわっているわけですが、「営業で見える化と言われてピンとこない?」「本当に、見える化が必要なのだろうか?」という、素朴な疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
最初に簡単に答えを言っておくと、「営業を中心とするホワイトカラーについては、実態がブラックボックスになっていて見えないため無駄が多く、プロセスを見える化しないと改善が難しく、生産性も低いままだからだ」ということになります。
詳しく順を追って説明していきましょう。まず、見える化する目的/最上位の課題ですが、組織における最も重要な永遠の課題は「継続的な業績の向上・改善」です。ところが、そのための一番のボトルネックは、受注・売上に直結する営業の実態が見えていない = 見える化ができていないというケースが多いのです。
日本企業は受注後の、ものづくりや接客サービスのところは標準化や見える化が進んでいるのですが、残念ながら営業を中心としたホワイトカラーの分野についてはまだまだ十分とはいえません。ここに手をつけないまま結果だけを追い求めても、もはや業績アップは望めないのです。
属人的なやり方に頼るのではなく、製造現場と同じように業務プロセスの標準化や見える化を行わないとさらなる進歩はありません。特に属人化している「できる社員」のノウハウの見える化が重要です。せっかくの貴重な知的資産が共有されないまま、非効率なやり方を繰り返すのでは思考停止です。
話はちょっとそれますが、最近何かと喧しい「働き方改革」や「生産性の問題」も、なぜか残業減らしというテーマに曲解されていますが、本来は各人の努力に任せるのではなく、組織として業務プロセスを標準化して見えるようにし、組織的な分業などの仕組みを再構築しなければ、本質的な解決には永久につながりません。
話を戻しましょう。最近はだいぶ怪しくなってきましたが、世界に誇る日本の製造業!その強みの基は何でしょうか? ・・・・・・・ 「見える化」と「カイゼン」です。
生産工程を見えるようにして、途中にチェックポイントを設ける。何か起こればすぐラインを止める。問題の原因を確認して、カイゼン策を考えて施す。このような、カイゼンサイクルを繰り返していきます。
一方の、営業はどうでしょうか? 残念ながら、営業も工場と同じようにしっかり見える化できているという話は、あまり聞いたことがありません。
逆に、精神論が多い、無駄が多い、そもそもブラックボックスなので何をやっているかぜんぜん見えな~い! とはよく指摘されるところです。
「PDCAを回す」という言葉は、当たり前のように使われていますが、実際にPDCAサイクルを回せている会社はどれくらいあるでしょうか? それほど多くないはずです。
しかし、工場でできることが、なぜ、営業現場ではできないのでしょうか? 同じ日本人なのに・・・ 不思議ですよね?
3つの理由が考えられます。まず、「営業は属人的なので、やり方を他人に見せたり共有する必要はない」という思い込み。
次に、「精神論・根性論ばかりで、科学的にモノゴトを考えようとしない」思考停止。
そして、極めつけが「肝心のカイゼンするモノが見えない」ということです。特に、3番目の実物が見えないという点が大きいですね。見えないからカイゼンしにくい。しかし、見えないからといってあきらめずに、工夫して少しでも見えるようにする。だから、見える化が必要だ、ということなのです。
抽象論ばかりだと退屈かもしれないので、その効果がわかりやすい例を、「すし職人の修行期間の話」をネタとしてご紹介したいと思います。
よく「炊き3年、握り8年」と言われ、一人前のすし職人になるには、10年以上かかると言われます。ところが、調理専門学校に3ヶ月通っただけで、なんとミシュラン(ビブグルマン)の一つ星をとってしまったおすし屋さんが大阪にあります。千陽というお店ですが、ご存知でしょうか?
「10年 vs 3ヶ月!」 差が大きすぎますよね~ いったいこの差は何なのでしょうか?
個人の才能や努力の差?・・・・・ 残念ながら、違います。もちろんまったく関係ないとはいう訳ではないのですが、それだけではないのです。ポイントは、「やり方が見える化され、学びやすくなっているかどうか」 ということなのです。
この調理専門学校では、魚を選ぶ、さばくといった基本から、タレの調合、すしの握り方など、一つひとつのプロセスをわかりやすく「標準化して文章化」した上で、テキストにしています。腕の立つすし職人の技やノウハウを、隠すことなく「見える化」して、誰でも短期間で一人前になれるような授業の仕組みをつくっているわけです。
営業でいえば、結果を出し続けていて誰もが一目おくような「できる営業」のやり方を、暗黙知ではなく形式知にして学びやすくしている、という風にも言い換えられます。
技は盗むものとか、先輩の背中を見て学べとか、まことしやかに言われているのは「常識のウソ」で、本当は見える化すれば、こんな短期間で一人前になることができるのです。何も教えないから、一つひとつを自分で考え、試行錯誤しながらやっていくので無駄が多く、結果的に10年もかかっていただけの話です。
もちろん自分で考えること自体を否定するわけではありませんし、自己研鑽や独自の創意工夫、変化に対応する進化の努力がなければ、本当の一流になりそのポジションを維持することはできません。
とはいえ、昭和の時代ならまだ余裕があったので、人財育成にかける時間がありました。しかし、平成で管理職のプレイングマネージャー化で人財育成がおろそかになり問題化しました。そして、今はもう令和の時代です。営業の見える化に取り組まないまま失われた30年が過ぎてしまいました。業績に直結するできる人財をスピーディかつ効率的に育成する仕組みの基として、プロセスの見える化にも真剣に取り組まなければ経営が立ち行かなくなります。
すし職人の話に戻ると、関係者の方からは怒られるかもしれませんが、本当の裏話をすると「10年かかる」というのは、実は店側が安い給料で、若い人をできるだけ長い間こき使うための方便だったのです。経営側の気持ちもわからないではありませんが、若い人からみればひどい話ですね。
営業などのビジネスでは、1人前になるのにだいたい平均で3年かかると言われます。しかし、見える化による人財育成(人材育成)に真剣に取り組めば、3ヶ月とは言わなくても、1年で「できる営業」に育てることは十分可能なのです。
目先の結果の目標達成だけに捕らわれ数字を追うだけでなく、組織で共有すべきノウハウややり方を標準化・見える化して、人財育成(人材育成)に真剣に取り組んでみる時代が来ているのではないでしょうか。
今回も最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
次回は、「じゃあ、具体的にどうすれば複雑な仕事のプロセスを見える化できるのか?」という疑問について解説する予定です。
(株)フリクレア 代表取締役
山田和裕
(2020年03月25日)