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プロセスを標準化する時の5つの注意点
6月のコラム(コラムNo.96 プロセスをまとめる4つのステップ) では、「標準プロセスをまとめるための4つのステップ」についてふれましたが、今回はその続編として、「プロセスを標準化する時に注意すべき5つのポイント」についてご説明したいと思います。
[ポイント①] ヒアリングの人数は多くしすぎない
ヒアリングをする人数は多い方がよいのではないかと考えがちですが、人数が増えるだけヒアリングに要する時間やまとめの時間などが、比例して増えていきます。2、3人程度では信頼度が落ちるのではないかと心配される方がいるかもしれません。
しかし、これまでのフリクレアの経験と実績からいうと、少人数であってもヒアリングの対象となる〝できる社員〟の選定を誤りさえしなければ、対象人数を多くした場合と比べて、それほど大きなぶれは生じません。
フリクレア独自のプロセス整理方法である3次元プロセス分析法®(コラムNo.65 3次元プロセス分析法を参照)では、手間と時間を減らし生産性を高めるために、ヒアリングの対象者を絞っています。
通常のプロセス分析では、ヒアリング対象者もできるだけ多い方がよいはずだという思い込み(誤った常識)があるので、できるだけ多くの人に短時間で断片的にヒアリングします。また、意見としては普通の人やできない人の話も聞いた方がよいだろうと、あまり深く考えず平等主義に則って広く浅く話を聞くために、内容の面白さや鋭利さがどんどん失われていきます。
そして最後は、間違いとは言えないがどこかで聞いたことのあるような差しさわりはない、しかし、心を打たない教科書的な一般論に落ち着いてしまうのです。
労力をかけそれなりに汗水流して作り上げた人には申し訳ないのですが、わかりやすくいうと、必要以上の手間と時間をかけわざわざ面白味もなく、現場としては活用する気にならないものを作り上げているわけです。そこでフリクレアではヒアリング対象者を、誰もが認める本当にできる社員1~3名に原則限定しています。
[ポイント②] 最初から、完璧を目指さない
最初から完璧な標準プロセスの設計を目指すのではなく、60点程度でスタートし、あとは継続的にカイゼンしていくという考え方をおすすめします。
スピードが求められる現代においては、100点を目指して時間をかけてやっている間に状況が変化し、求められる業務改善の内容にも変化が必要になります。このため、最初から完璧を求めて時間をかけたりせず、継続的にカイゼンしていく仕組みをつくったり、習慣づけていく方が時代にマッチしているのです。
[ポイント③] 見た時に嫌にならないように、プロセスの数は少なめにする
また、スタート時は、あえてプロセス項目を少なくする「スモールスタート」をおすすめします。項目が多すぎるより、逆に少ないくらいの方ほうが、社員たちから「あのプロセスが抜けている」とか、「こういった項目が入れられないか?」などの現場の意見が出てきやすいのです。
管理者側の視点から設計していくと、あれもこれもとプロセスの数を増やしてしまい、すぐ50~100の項目をつくってしまうという落とし穴に陥りがちですが、これは絶対やってはいけません。精緻すぎて見る人が嫌にならないように、あくまで目的にそった最小限のプロセス項目にすることが成功に導くテクニックの一つなのです。
わかりやすく、フランス料理のフルコースに例えてみましょう。仮に、これから食べるすべての料理がテーブルの上にのっているところを想像してみてください。食欲旺盛な人は別として普通は、「こんなにたくさん食べるのか」と見ただけで食欲が失せてしまうのではないでしょうか。
しかし、実際は1品1品少しずつ料理が出てくるので、時間をかけながら結果的には思っている以上の料理が食べられるのです。「スモールスタート」をおすすめするのも同じ心理的効果をねらっているのです。
[ポイント④] 現場の意見を聴いて、自発的な意見を出しやすくする
標準プロセス決定前には、必ず現場に確認するステップを入れてください。この過程は、実際標準プロセスに取り組んでもらう現場の社員に対しても、プロジェクトの趣旨や概要を、あまりかしこまらない形で説明していくよい場となります。
そうして、まずはきちんと社員の理解を得て、味方になってもらうのです。彼らときちんと話をして本音を聞き出さなければ、プロセス標準化やその取組の必要性に対する共感を呼び起こすことはできません。最終的にはプロジェクトへの建設的な参加意識を醸成するという、重要な啓蒙活動も兼ねているのです。
このステップを抜かしていきなり「標準プロセスをつくったので、これからはこれで仕事を行うように」とやると、現場の社員から反発を招くのは必至です。人は押しつけられたもの、特に現場を知らない人から強制されたものは素直にやりたがりません。
しかし、彼らに「自分の意見も聞いてもらっている。プロジェクトに参加している」という参加意識が芽生えてくれば、真剣に考えるようになります。人は自発的に言い出したことは、他人に強要されなくても進んで取り組んでいくものです。「社員から自発的に意見が出るように配慮すること」も、標準プロセスをもとにプロセスマネジメントを現場で実践し定着させるための、重要なノウハウのひとつです。
[ポイント⑤] 意見は聴きすぎずに、継続的にカイゼンする
現場の意見は大切ですが、取り入れるのは聞いた意見の3割ぐらいを目安にしてください。キーパーソン(できる社員)以外の意見は選別が必要です。あまり多くの意見を聞きすぎると、視点がぼけてしまうからです。こういった機会に日頃の不満を吐き出すタイプも少なくありません。
そのためにはこういう場合は、意見を三つくらいのカテゴリーに分類し、優先順位を決めて整理する方法が有効です。ポイントは、社員の意見を多少なりとも反映することで、彼らが「自分の意見をきちんと聞いてもらっている」と感じるように効果的に印象づけることです。
現場社員の意見を参考に取り入れて標準プロセス(Ver.1)を決めます。その後実践しながら、違和感のある言葉を修正したり、抜けているプロセスを加えたり、あるいは、逆に標準プロセスとして入れてみたものの、実際はあまり行われていないプロセスがあれば項目から削除する、などの修正を行っていきます。
ポイント②~④の振り返りにもなりますが、標準プロセス設計にあたっては、「完璧さにこだわらない」「プロセスの数は少なめに」「現場の確認を取る」の3つは必ず守るようにしてください。
もちろんこの時点でのベストと思われる設計を行います。しかし、「ビジネスにおいては、状況が常に変化しているので、完璧なプロセスは永久に存在せず、継続的にカイゼンする」と考える方が現実的なのです。