事例紹介(7)私の手柄ではありません

これは、旧財閥系の都市銀行の頭取にまで上りつめたUさんの支店長時代のエピソードです。

今から30年ほど前、Uさんは東京都内にある支店の支店長を務めましたが、その際、「強制1日預金」という悪しき慣習を断ち切るために思い悩みました。

その頃、銀行の支店の成績評価は、預金残高が一つの指標となっていました。当時はどの銀行でも預金残高を水増しするために、取引先企業に無理やり頼んで月末最終日に預金をしてもらい、翌月1日にはまた返すという“強制的な協力取引”が当たり前のように行われていたのです。

しかし、たった1日だけ預金をしてもらっても本当の実績ではないのですから、銀行にとっては実質的には何のメリットもありません。皆もわかっているのですが、50億円とバカにならない金額であったため、やめるわけにもいかず惰性でマンネリ化していました。

そこでまず、Uさんは全支店の成績を管理している本店の業務部長に会ってこのことを相談しました。
「こういった数字づくりはやめるべきです。月末に一時的に増える預金残高で支店の業績を評価しても意味がないではありませんか」

と進言したのです。業務部長もこの現場の実態は知らず驚きましたが、
「君の言うことも道理だが、これをやめると毎月数十億円も預金量が減ってしまうではないか……」

と苦渋の表情を見せるだけで、状況にメスをいれるつもりはありませんでした。

そこで、Uさんは一計を案じて、思い切った行動に出ました。ある日、本店で開かれた支店長会議に出席したUさんは、頭取をはじめとした銀行の幹部たちを前にして、
「預金残高は、私の手柄ではありません!」

と発言したのです。驚いた顔をしている頭取や幹部たちに向かってUさんはその理由を説明しました。そして、
「見せかけの数字だけ見てはいけません。数字をつくるプロセスに目を向けない経営を続ければ、必ずどこかでその報いがきます」

と訴えました。Uさんが話し終えると、しばらく沈黙の時が流れました。そして、頭取は皆に向かってこう言ったのです。
「勇気をもって正しい意見を言える君のような人物は、わが行の大切な財産だ」

もし、Uさんの進言が頭取に理解されなければ、その後の出世の望みは絶たれ、地方に飛ばされるところでした。Uさんはそれも覚悟の上で、銀行の将来のことを切に思い正義感から発言したのです。勇気をもって発言したUさんは称えられるべきですが、その正論をきちんと受け止める度量のある頭取がいてくれたのも幸いでした。

その後Uさんは、頭取のバックアップを得て、法人部門における意味のない預金取引を一切やめました。その代わりに、月末の数字づくりに費やしていた労力を本来注力すべき個人の預金獲得に振り向けることで、実質的な成績を向上させ、法人部門で減った預金量を穴埋めしたのです。

ちなみに、Uさんが行った「月末だけの強制預金をなくす動き」は、この銀行だけにとどまらず、その後他の銀行にも広がっていったということです。

人の手柄を黙って自分のものにしてしまう人が多い世の中ですが、Uさんのような姿勢をぜひ見習いたいものです。

(2010年1月8日)

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